北鎌倉の禅寺・円覚寺で心を整える

2023.07.14

北鎌倉にある円覚寺は、鎌倉時代に開山した歴史ある寺院です。今回は、円覚寺の歴史や見どころをご紹介します。
北鎌倉を訪れる際の参考にしてみてください。

臨済宗・円覚寺派の総本山

【円覚寺】三門

JR北鎌倉駅より徒歩1分の位置にある円覚寺。鎌倉市山之内にある寺院で、正式名称は瑞鹿山円覚興聖禅寺(ずいろくさんえんがくこうしょうぜんじ)といいます。

北条氏や幕府の帰依を受けて開山

【円覚寺】総門

鎌倉時代後半の1282年、鎌倉幕府執権の北条時宗(ほうじょうときむね)が国家の鎮護や禅を広めたいという願いに加えて、1274年・1281年の蒙古襲来による殉死者を敵味方の区別なく平等に弔うために、中国・宋より招いた無学祖元禅師により開山されました。

円覚寺の寺名は、建立の際に大乗経典の「円覚経(えんがくきょう)」が出土したことが由来といわれています。また、山号である「瑞鹿山(ずいろくさん)(めでたい鹿のおやま)」は、仏殿開堂落慶の際に、開山・無学祖元禅師の法話を聞こうと白鹿が集まったという逸話がもとになってつけられたといわれます。

【円覚寺】仏殿

開基である時宗公は18歳のときに執権職につき、その後無学祖元(むがく そげん)禅師を師として深く禅宗を拠り所にしていました。
鎌倉にはすでに時宗の父・北条時頼(ほうじょうときより)が創建した禅寺の建長寺がありました。しかし、官寺的性格の強い建長寺に対し、当初の円覚寺は北条氏の私寺という側面が強く、建長寺とは別の役割を担っていたことになります。

無学祖元禅師の教えは、その弟子たちに受け継がれて行きます。鎌倉後期の臨済宗の僧である高峰顕日(こうほうけんにち)禅師や、臨済宗の禅僧・作庭家・漢詩人・歌人である夢窓疎石(むそうそせき)禅師などがその代表です。

【円覚寺】大方丈

また、継承された仏法は室町時代に日本の禅の中心的存在となり、 五山の禅僧による漢詩文である五山文学や、室町文化に多大な影響を与えました。

創建以来、北条得宗の祈祷寺となるなど、円覚寺は北条氏をはじめ朝廷や幕府からの篤い帰依を受けていました。
寺領の寄進などにより経済的な基盤を整え、鎌倉時代末期になると伽藍が整備されました。

火災被害からの復興

 室町時代から江戸時代にかけて、円覚寺はいくたびかの火災に遭い、衰微したこともありました。
しかし、江戸時代後期になると、大用国師が僧堂・山門等の伽藍を復興され、宗風の刷新を図り今日の円覚寺の基礎になりました。

禅宗文化の中心的存在に

【円覚寺】坐禅の様子

今北洪川老師・釈宗演老師の師弟のもとに、雲水や居士が参集し、多くの人材を輩出しました。
今日の静寂な伽藍は、創建以来の七堂伽藍の形式を伝えており、現在禅宗文化の中心的な存在としてもさまざまな坐禅会が行われています。

境内を彩る季節の花

【円覚寺】黄梅院前のヤマブキ

円覚寺で見られるのは、春の梅や桜、初夏のあじさい、秋の紅葉など。広い境内の中には、見ごたえのある木々や草花が豊富です。

春の風物詩・梅と桜

【円覚寺】三門と桜

梅は2月の下旬頃からちらほらと咲き始め、3月には満開を迎えます。
仏殿前の紅白の梅は凛として美しく、鮮やかで見ごたえがあります。また、居士林の白梅は何本か並んで咲いており、風流な春の景色。

閻魔堂には河津桜の姿。河津桜は早咲きのため、3月にもピンク色の花を咲かせます。
そのほか、おかめ桜、彼岸桜など、少し珍しい種類の桜の姿も見られます。

【円覚寺】唐門と桜

4月近くなるとソメイヨシノは満開を迎えます。
雲が棚引くように伸びた枝から咲く花は美しく、円覚寺の建造物の風景ともよく合います。

広い境内に点在するあじさい

【円覚寺】参道の青いあじさい (画像提供:宮本英治)

円覚寺のあじさいの時期は、5月下旬から6月上旬にかけて咲き始め、6月中旬に見頃を迎えます。
境内のさまざまな場所に点在しており、タマアジサイやガクアジサイが多く、色もピンクや水色、紫など多様です。

【円覚寺】あじさい越しに見る唐門(画像提供:宮本英治)

黄梅院、弁天堂のほか、三門近くや仏殿の左側、三門から妙高池に向かう参道にもその姿が見られます。

【円覚寺】茅葺屋根の選仏場を見上げるあじさい

円覚寺の歴史ある建造物と相まって、鎌倉らしい味のある美しさを楽しめるでしょう。

圧巻の紅葉景色

【円覚寺】総門と紅葉

円覚寺の紅葉は11月末から12月初めに見頃を迎えます。
まずは門前の紅葉が参拝客をお出迎え。黄色から赤への鮮やかなグラデーションが澄んだ空に映えて美しい景色が見られます。

【円覚寺】居士林と紅葉

さらに、三門と階段や、閻魔堂辺りも、見上げると真っ赤な紅葉が広がります。
居士林の前にある紅葉は、奥の山林と相まって、圧巻の自然の景色を楽しめます。

円覚寺の行事

円覚寺では、有名な舎利殿の特別公開のほか、正月の大般若祈祷会、2月の涅槃会、4月の降誕会(花まつり)など、見学が可能な行事・法要が行われています。そのほか、法話会、座禅会、写経会なども行われており、気軽に参加できるのが魅力です。

国宝舎利殿の特別公開

普段は非公開の国宝である舎利殿の特別公開が行われるのは、年に数回のみ。2023年は1月1日~3日、5月4日~6日、11月上旬(詳細未定)の3期間です。時間は:00頃から16:00頃。
1月と5月は特別拝観、11月は宝物風入れと呼ばれています。

舎利殿は、円覚寺の塔頭・正続院の奥にある建造物であり、佛牙舎利と尊崇されるお釈迦様の歯牙をお祀りしているところです。
鎌倉時代に中国から伝えられた様式を代表する、最も美しい建物として、国宝に指定されています。屋根の勾配や軒の反りの美しさが見どころです。

自分と向き合う暁天坐禅

【円覚寺】坐禅会

ほぼ毎日円覚寺で行われている坐禅会は、予約不要・無料で参加でき、誰でも気軽に坐禅を体験することができます。
スタートは早朝6時から。早朝の心地よい空気を感じる5:50分に円覚寺の仏殿横に集合します。
坐禅の姿勢、座り方、呼吸方法を教えていただき、坐禅の時間が始まります。

【円覚寺】坐禅で身を清める

かつて夏目漱石や島崎藤村、三木清も参禅したことが知られている坐禅会に参加してみるのもおすすめです。

円覚寺の見どころ

円覚寺の伽藍は、鎌倉独特の谷戸と呼ばれる丘陵地が浸食されてできた谷に沿って建てられています。三門を入り、仏殿、方丈へと徐々に登っていく配置は、この土地の高低差を生かした壮大な空間をつくりだしています。
そんな境内にはたくさんの見どころがあります。

神奈川県指定重要文化財の三門

【円覚寺】紅葉の時期の三門

現在の三門は1785年、開山・無学祖元禅師の五百年遠諱の年に大用国師だいゆうこくしによって再建され、現在は神奈川県指定重要文化財となっています。

「円覚興聖禅寺」の扁額は、北条貞時の時代に伏見上皇より賜ったものです。楼上には通常非公開である十一面観音、十二神将、十六羅漢が祀られています。

白龍図が特徴的な仏殿

【円覚寺】仏殿内

円覚寺のご本尊が祀られている建物です。1923年の関東大震災で倒壊しましたが、1964年に再建されました。
禅宗様式の七堂伽藍の中心に位置する建物です。開山毎歳忌、達磨忌、臨済忌、祝聖などの行事や毎朝の暁天坐禅が、ここで行われています。
天井の「白龍図」は、前田青邨画伯の監修のもと、守屋多々志画伯によって描かれたものです。

風流な景色を生む妙香池

【円覚寺】妙香地

創建当初よりある放生池で、江戸時代初期の絵図に基づき、2000年に方丈裏庭園と合致した自然の姿に復元されました。
向こう岸の露出した岩盤を虎の頭に見立て、「虎頭岩」と呼んでいます。

鎌倉三名鐘の洪鐘

高さ259.5cm・口径142cmと、関東で最も大きい洪鐘で、建長寺の梵鐘とともに国宝に指定されています。また、鎌倉三名鐘の一つでもあります。
円覚寺の開基である北条時宗の子である貞時が1301年に国家安泰を祈願して寄進したものです。

さまざまな体験ができる寺院

円覚寺では、舎利殿特別公開などの貴重な国宝を見る機会があるほか、暁天坐禅会をはじめ、法話会、写経会など、自らが気軽に行事に参加することができるのが魅力の寺院です。
忙しい日常から離れ、自然と親しんだり、自分と対話するようにゆったりと流れる時間を感じたりしたいという人は、ぜひ円覚寺に訪れてみてはいかがでしょうか。

スポット名円覚寺
住所神奈川県鎌倉市山ノ内409
電話番号0467-22-0478
参拝時間3月~11月:8:00~16:30
12月~2月:8:30~16:00
※令和5年8月31日までは午前8:00 拝観開始
拝観料大人:500円(高校生以上)
小人:200円(小中学生)
URLhttps://www.engakuji.or.jp/
記事を書いた人
関東在住のフリーライター。街歩き・読書・映画など、ひとりで楽しめるものが好きです。