鎌倉の日常風景を感じながら、喧騒から離れて静かな時間を味わいたい方に、緑豊かなお寺を巡る半日コースをご紹介します。健康的な和定食で腹ごしらえし、朝の音楽イベントで食後のコーヒーとともに音楽を。鎌倉最古の杉本寺で苔の階段を堪能したあとは、北鎌倉へ足を伸ばし、谷戸地形にみずみずしい苔と緑が広がる浄智寺・東慶寺を訪れます。お昼は鎌倉野菜のランチで、身体の中と外からリフレッシュできるプランです。

「朝食屋コバカバ」で日本の朝ごはん

8:00-
鎌倉の旅は、ちょっと早起きして、まずは腹ごしらえから。
鎌倉駅東口から徒歩3分の場所にある「朝食屋コバカバ」は、朝ごはんが食べられる食堂です。

焼き魚に納豆、味噌汁に、ご飯。日本ならではのお馴染みの食材を使用した和定食は、健康的で身体全体に染み渡る美味しさ。
朝ごはんを通して日本の日常に一気にトリップし、散歩の英気を養いましょう。

丁寧に選ばれた素材、店内に漂う香ばしい焼き魚やお茶の匂い、スタッフの方々の朗らかな会話、大きな窓から差し込む光。
五感で気持ちいい朝の空気を味わえ、週末ともなると常にお客さんでいっぱいの人気店です。

お店のすぐ横は鎌倉市農協連即売所(レンバイ)。鎌倉野菜をはじめとする色とりどりの食材が売られる農産物直売所で、年季の入った味わい深い建物も見どころです。食後にぶらりとのぞいてみると、また日本の日常風景を体感できます。

●朝食屋コバカバ
住所/神奈川県鎌倉市小町1-13-15
電話/0467-22-6131
営業時間/7:00〜14:00
定休日/水曜
http://cobakaba.com/

●鎌倉市農協連即売所
住所/神奈川県鎌倉市小町1-13-10
電話/なし
営業時間/8:00頃〜野菜がなくなるか日没まで
定休日/なし(1月1日〜4日を除く)
http://kamakurarenbai.com/

「グリーンモーニングミュージック」で古き良き音楽を

9:30
毎月第2日曜朝に開催されるのが市内2店舗を中心に開催される、朝の無料音楽ライブ「グリーンモーニングミュージック」。先ほどご紹介した朝食屋コバカバも、会場の一つです。
ライブに出演するのは、ハワイアンやブルーグラス、昭和歌謡をはじめとした、どこか懐かしい古き良き音楽を奏でるミュージシャンたち。

スラックキーギターやバンジョー、ウクレレなど、世界各地の日常を彩ってきたアコースティック楽器によるアンプラグドな音色と、ごきげんな歌が優しく響き、朝のひと時をゆったりと彩ってくれます。
食後のコーヒーをいただきながら、異国情緒と懐かしさ漂う音楽を楽しみましょう。

●グリーンモーニングカマクラ
会場/朝食屋コバカバ(神奈川県鎌倉市小町1-13-15)、カフェ・ゴーティー(神奈川県鎌倉市小町2-10-7ストロービル3F)
開催期間/毎月第2日曜日
開催時間/朝食屋コバカバ 8:00〜10:00頃、カフェ・ゴーティー 9:30〜11:30頃
入場料/無料(要・飲食)
※予約不要。詳しいスケジュールはFacebookページをご確認ください。
https://www.facebook.com/GreenMorningKamakura/

苔の階段が壮観!鎌倉最古のお寺・杉本寺

食と音楽を楽しんだあとは、「若宮大路」からバスに乗り、「杉本観音」にて下車。3分ほど歩くと杉本寺があります。
杉本寺は、鎌倉幕府が成立する500年も前の奈良時代(8世紀)に創建された、鎌倉最古のお寺。関東約1300kmにわたる坂東三十三観音霊場巡り、かつ鎌倉三十三観音霊場巡りの第一番札所でもあります。
鎌倉時代に火災が起こった際、本尊三体が庭の大杉の下で火を避けられたというエピソードから、今日まで「杉の本の観音」と呼ばれたと伝えられています。
杉本寺の見どころは、苔の階段。入り口の階段を登り、仁王門をくぐると、びっしりと苔に覆われた階段が現れます。すり減った石段が苔むす様子は、多くの参拝客が訪れた年月を物語っています。

階段は、苔の保護のため現在立入禁止となっています。すぐ下までは行けるので、ぜひ見上げて迫力ある苔の風景を堪能しましょう。

苔の階段の左脇には、本堂へ続くもう一つの階段があります。土台が苔で緑色をした灯篭や、石垣と一体化する樹木の根。そこに絡みつくつる植物。
階段脇にも目を向けてみると、随所で植物と建造物とが徐々に融合しており、この地が育んできた時間の流れを感じます。

階段を登りきると、本堂が現れます。本堂内には、本尊である3体の十一面観音像が安置されています。

本堂を左手に右側へ少し進むと、先ほどの苔の階段を見下ろすことができます。苔で段差がほとんど見えなくなった階段が、なだらかな坂のように下まで続く様子は、なかなか見られない光景です。

さらに進むと右手に鐘楼堂、左手にはおびただしい数の五輪塔に、7体のお地蔵様。

じっとりと苔や地衣類がへばりついた五輪塔は、死者を弔うための供養塔だそう。静かに手を合わせたくなる光景です。

観光客で賑わう鎌倉駅周辺の喧騒から少し離れた杉本寺では、圧倒的な時の重なりで醸成された、静かで美しい日本の風景を楽しめます。

●杉本寺
住所/神奈川県鎌倉市二階堂903
電話/0467-22-3463
拝観時間/8:00~16:30
※入山受付16:15まで
拝観料/一般(高校生以上)300円、中学生200円、小学生100円
http://sugimotodera.com/

緑深い散策路を歩く・浄智寺

11:30
杉本寺から16分ほど歩いて「鎌倉八幡宮前」からバスに乗り、「明月院」で下車。バス停すぐ脇の道を左手に登っていくと、浄智寺が見えてきます。

ここ浄智寺は、鎌倉の禅宗寺院を代表する「鎌倉五山」の一つ。山あいの谷地に位置し、豊かな緑に包まれた境内は、国の史跡に指定されています。
かつてはここで、数百人もの僧侶が修行生活をしていたそう。
境内地は古くから文化人に好まれ、『東京物語』をはじめとする名作で世界的に知られる映画監督・小津安二郎も、この地に暮らしていました。

浄智寺の本堂「曇華殿(どんげでん)」の名は、三千年に一度だけ咲く伝説の花に由来し、内部にはご本尊として、過去・現世・未来を象徴する三体の如来像が安置されています。

浄智寺の見どころは、木々に囲まれた散策路。本堂、そして茅葺き屋根の書院を右手に奥へ進んでいくと、みずみずしい森が広がります。

風で揺れる竹林の下をゆっくり歩くと、心の芯から静かに浄化されていく感覚になれます。

竹林を抜けると奥に洞穴のようなものが見えてきます。これは「やぐら」といい、柔らかい鎌倉石の山を掘った祠のこと。
平地の少ない鎌倉では、谷戸を有効活用するため、至るところでこの「やぐら」が見られます。かつては中で僧侶が修行したり、地位の高い人のお墓になっていました。

やぐらの近くでは、カラーコーンの中でお地蔵さんが微笑んでいました。

すぐそばに苔むした狸の置物も。「他を抜く」縁起物として親しまれる狸の置物は、朴訥とした表情がなんとも言えず愛らしく、日本では古くから庭先や軒先で親しまれてきたオーナメント。
ぜひ日本の街を歩くときも、狸の置物を探してみてください。意外にも色んなところに潜んでいますよ。

緑深い浄智寺。散策路をゆっくりと一周し、たっぷりとみずみずしい空気を浴びてリフレッシュしましょう。

●浄智寺
住所/神奈川県鎌倉市山ノ内1402
電話/0467-22-3943
拝観時間/9:00~16:30
拝観料/大人200円、小人100円
URL: https://jochiji.com/

地産地消にこだわる「ひ路花」で、鎌倉温野菜のランチ

12:30
そろそろお腹が空いてきました。お昼をいただくのは、浄智寺から徒歩5分ほどの場所にあるレストラン「ひ路花(ひろか)」です。

地産地消にこだわっているこちらのお店でいただいたのは「鎌倉温野菜ランチ」(税込1250円)。地場野菜がたっぷり乗ったスープに、鎌倉・富岡商会のハム、ふかふかのパンがセットになっています。

温野菜のスープは野菜の甘みが出た優しい味わい。燃料のついたお鍋で提供してくださるので、食べ終わるまでホカホカと温かさが続きます。
散策で疲れた身体が、緩やかにほぐれていくような味わいです。

「ひ路花」という店名は、店主の“広川さん”、アプローチの“路地”、そして奥様が育てている“花”を組み合わせたお名前だそう。その名の通り、お店の前の路地やお庭には、様々な種類の植物が生き生きと育っています。

お庭は一年草と多年草を組み合わせ、なるべく手を加えず自然な状態を保っているそう。とりわけ目を引くピラカンサの大木は、50年は経っているとのことで、「鳥がようやく実を食べきった」とおっしゃっていました。

●ひ路花
住所/神奈川県鎌倉市山ノ内375
電話/0467-33-7233
営業時間/11:00-17:00
定休日/火・木曜日
URL: http://hiroka01.web.fc2.com/

谷戸地形に緑豊かな境内が広がる東慶寺

13:30
お昼をいただいた後は、「ひ路花」から5分ほど歩き「東慶寺」へ。ここ東慶寺は「駆け込み寺」として知られ、夫から離縁状をもらわない限り女性側から離婚できなかった封建時代、一定の修行をすると離縁できる女人救済の寺でした。

入口付近で目を奪われるのが、庭木の足元をふかふかと覆う苔の絨毯。

山門をくぐると、谷戸地形の中に境内が奥まで広がっています。東慶寺の見どころは、本堂へと続く小道の両脇に数十本も植えられた梅の古木。

木肌は、びっしりとウメノキゴケという地衣類に覆われています。排気ガスに弱いウメノキゴケがこれだけ見られるのは、空気が綺麗な証拠とも言えます。

梅の木々の間を抜けると、宝物館の前に大きな石が。日本の国家「君が代」の歌詞にも登場する「さざれ石」です。

石像を右手にさらに奥へと進むと、背の高い木々に囲まれた墓苑が現れます。石段や樹木の幹が谷戸の湿気を帯びた空気の中でじっとり苔むしています。

苔に包まれた異世界のような空間が、本日の散策のフィナーレです。

東慶寺より徒歩5分程度のJR北鎌倉駅から、帰路につきましょう。

●東慶寺
住所/神奈川県鎌倉市山ノ内1367
電話/0467-22-1663
拝観時間/8:30~16:30 ※10月〜3月は16:00まで拝観料/大人200円、小・中学生100円
URL: https://tokeiji.com/

記事を書いた人
逗子在住。外資系出版社勤務の傍ら、2016年よりライターとして活動開始。2020年2月よりフリーランス。街角の園芸活動や植物に魅了され「路上園芸学会」を名乗り魅力を発信。 ウェブメディアを中心に、街歩きや植物に関する取材記事、インタビュー記事などを執筆。2016年よりデザイナーの藤田泰実とともに路上観察ユニット「SABOTENS」としても活動。組み合わせると路上園芸の風景が作れる「家ンゲイはんこ」の制作や、国内外での作品展示・グッズ販売を行う。