日本初の禅寺専門寺院・建長寺

2020.06.23

鎌倉五山第一位の建長寺

北鎌倉にある建長寺は、鎌倉五山第一位の寺格をもち、臨済宗建長寺派の大本山として知られる、日本初の本格的な禅寺です。
北鎌倉駅から15分ほど歩いたところに位置し、静かで広大な境内の裏山には、鎌倉アルプスへと続く山道も。
この記事では、北鎌倉を代表する寺院のひとつ、建長寺の見どころをご紹介します。

「けんちん汁」発祥の寺!日本初の禅寺

建長寺が建立したのは1253(建長5)年。鎌倉幕府の五代執権・北条時頼が、中国の禅僧・蘭渓道隆(らんけいどうりゅう)を招き創建しました。
建長寺の創始者である蘭渓道隆は、中国の高僧・無明惠性に学んだ禅僧。33歳で来日し、九州や京都を回った後、建長寺に入山しました。
道隆は中国宋時代の純粋で厳しい禅をそのまま導入し、天下の禅林として、多くの修行僧たちを指導しました。中国文化の受容や勉学の場として、一時は1000人を超える修行僧がいたそうです。国宝として寺に残る「法語規則」には、当時の厳しい修行の内容が記されています。

なおごぼうや大根、里芋などの根菜類をだし汁で煮込んだ「けんちん汁」は、今では家庭料理としてもおなじみですが、なんともともとは、建長寺の修行僧たちに供された精進料理。「建長寺の汁」が「けんちん(建長)汁」として広まっていったそうです

建長寺が建立される前、この地は「地獄谷」と呼ばれた罪人の処刑場で、そこに、地蔵菩薩を本尊とする伽羅陀山心平寺というお堂がありました。
現在お堂は横浜三渓園に移設されていますが、本尊と伝えられる地蔵菩薩坐像は、現在も建長寺の仏殿内に安置されています。

境内の建築は、中国の禅宗様式

建長寺は、JR横須賀線北鎌倉駅から徒歩15分程度。北鎌倉駅または鎌倉駅から、入口付近に止まるバスも出ています。
北鎌倉駅西口を出て左手、鎌倉方面に道なりに歩いていくと、ビャクシンの巨木に守られるように佇む「臨済宗五山第一 建長寺」と記された石碑が見えてきます。

■天下門

石碑の奥にある門は「天下門」と呼ばれる門。扁額には、「人材を広く天下に求め育成する禅寺」といった意味の「天下禅林」という言葉が記されています。

■総門

天下門をくぐると広大な駐車場があり、左手に建長寺の総門が堂々と佇んでいます。

建長寺の建築は、中国の禅宗様式に基づき、総門・三門・仏殿・法堂・方丈が一直線に連なっています。
その入口となるのが総門。現在の総門は、1783(天明3)年に京都の般舟三昧院(はんじゅざんまいいん)で建立されたものを、1940(昭和15)年に移築したものです。

扁額には、「大きな福をもたらす寺」を意味する「巨福山」(こふくさん)という言葉が記されています。建長寺第十世住職である、一山一寧禅師(いっさんいちねいぜんじ)の筆によるものです。

総門をくぐると右手に受付があるので、ここで拝観料を払いましょう。
左手は朱印所となっています。御朱印をいただきたい方は、拝観受付後に御朱印帳を預けておくと、帰る時に受け取れます。

三門へ続く参道の両脇には桜の古木が並び、桜が咲き誇る開花シーズンには、見事な薄紅色のアーチとなります。

■三門(国重要文化財)

受付の先に建っているのが、国重要文化財である「三門」。空・無相・無作の「三解脱門」の略で、この門をくぐることによってあらゆる執着心から解き放たれ、心が清浄になることを意味します。現在の三門は、1775(安永4)年に、万拙硯誼(ばんせつせきぎ)和尚の尽力で再建されたもの。
楼上には、釈迦如来・十六羅漢・五百羅漢が安置されています。

■県下の名木・柏槇

三門をくぐると、その先の「仏殿」へ続く参道の両脇に、柏槇(ビャクシン)の古木が植えられています。

ビャクシンはイブキとも言い、東北南部から九州にかけて生える常緑高木。建長寺のビャクシンは、寺を開山した蘭渓道隆が、中国から持ってきた種子を創建の際に蒔いたものといわれています。

樹齢は約760年と推定され、樹高13メートル、胸高周囲6.5メートル。「かながわの名木百選」および「鎌倉市指定保存樹木」にも指定されている、県下の代表的な名木です。
うねりながら勢いよく広がる幹と葉。威風堂々たる佇まいです。

■梵鐘(国宝)

三門の横には、国宝である梵鐘があります。1255(建長7)年に、関東鋳物師の筆頭である物部重光により鋳造された鐘。
夏目漱石がつくった「鐘つけば銀杏ちるなり建長寺」という俳句がありますが、正岡子規はこの句を参考に、「柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺」という句を詠みました。

■仏殿(国重要文化財)

ビャクシンの並木の先には、国重要文化財である「仏殿」が佇んでいます。現在の建物は、東京・芝の増上寺にあった、徳川二代将軍秀忠公夫人・崇源院の霊屋(おやまや=墓)を移築したものです。

仏殿には、建長寺の本尊である地蔵菩薩坐像が安置されています。前述のとおり、建長寺建立以前にこの地に地蔵信仰があったため、現在でも本尊が地蔵菩薩となっているといわれています。

■法堂(国重要文化財)

仏殿の先にあるのが、法堂。
住職が仏に代わって説法するためのお堂で、昔は山内にいる僧侶全員が法堂に集まり、住職の説法を聞いたそうです。
現在では修行道場は別の場所に移り、法要や講演、展覧会などで使われています。

現在の建物は、1814(文化11)年に再建されたもので、関東最大の法堂となっています。
天井には、建長寺の創建750年を記念し、日本画家の小泉淳作が描いた雲龍図が掲げられています。

■唐門(国重要文化財)・方丈(龍王殿)・庭園(名勝史跡)

法堂の先にあるのが、方丈(龍王殿)。その正門が、国重要文化財である「唐門」です。漆塗りで、牡丹唐草文などの彫刻がほどこされた、桃山風の装飾がほどこされています。
東京・芝の増上寺から霊屋を移設した際、仏殿とともに移築されたものです。

唐門の奥が、方丈(龍王殿)。昔は住職が居住する場所でしたが、現在は法要や座禅、研修の場として使われています。靴を脱いであがって見学することができます。

方丈の背後には、創建当時よりある国史跡の庭園が控えています。
寺院の寺は、通常お寺の前にありますが、建長寺では最奥に位置しています。
「三碧地」(さんぺきち)という池を中心とする、しずかで青々とした庭園を、廊下からゆっくり眺めることができます。

壮観!半僧坊から見渡す広大な境内

方丈を右手に奥へ進むと、「半僧坊道」と書かれた石碑が見えます。

ハイキング気分でなだらかな坂道と階段を登っていくと、境内の最奥部となる場所に「半僧坊」があります。

建長寺の鎮守である「半僧坊大権現」と、その供である天狗がまつられています。石段周辺にも、建長寺を見守るように12体の天狗像が立ち並んでいます。

建長寺の裏山である半僧坊からは、建長寺の全景を見渡すことができます。
天気の良い日には、「富士見台」というテラスから、富士山を眺めることも。
半僧坊をさらに奥へ登っていくと、天園ハイキングコースへと続く道があります(※現在は通行禁止)。

鎌倉五山の第一位である、格式ある建長寺。
禅寺の趣ある静かで広大な境内と、重要文化財の建造物の堂々とした佇まい。
そして巨樹や庭園、そして境内の最奥から見渡す鎌倉の山と海。
長い時間をかけ、周囲の自然環境ともにつくりあげられてきた建長寺の空間を、ぜひ味わってみてください。お時間がある方は、座禅や写経を体験して見ても。

建長寺
〒247-8525 神奈川県鎌倉市山ノ内8
TEL 0467-22-0981
拝観時間 8:30~16:30
拝観料 大人(高校生以上)500円、 小人(小中学生)200円
駐車場 有り
URL https://www.kenchoji.com/

記事を書いた人
逗子在住。外資系出版社勤務の傍ら、2016年よりライターとして活動開始。2020年2月よりフリーランス。街角の園芸活動や植物に魅了され「路上園芸学会」を名乗り魅力を発信。 ウェブメディアを中心に、街歩きや植物に関する取材記事、インタビュー記事などを執筆。2016年よりデザイナーの藤田泰実とともに路上観察ユニット「SABOTENS」としても活動。組み合わせると路上園芸の風景が作れる「家ンゲイはんこ」の制作や、国内外での作品展示・グッズ販売を行う。