鎌倉の苔寺として有名な妙法寺。苔の風景とお寺という、趣を感じられる組み合わせが好きという人は多いのではないでしょうか?
自然豊かな場所にある妙法寺は、境内を進んでいくと、海や鎌倉の街を見渡せる絶景を楽しめる場所も。苔が青々と美しい季節はもちろん、季節を感じられる花々や歴史を感じられる見どころがたくさんあります。苔寺としての魅力、そしてその他の見どころをお伝えします。
神秘的な美しさに魅了される鎌倉の苔寺
妙法寺は、鎌倉の大町という海に近いのんびりとした雰囲気の残るエリアに佇んでいます。緑が多く自然が感じられる境内は、ゆったりと散策したい時にぴったり。なかでも苔むした石段は、眺めるだけで癒し効果があります。そこでまずは、妙法寺の苔の魅力について詳しく確認していきましょう。
『苔寺』と呼ばれる理由とは
苔に覆われた姿がなんとも美しい石の階段があるという理由から、『苔寺』という別名を持つ妙法寺。緑豊かな境内の中でも、苔の石段は風情を感じられ、神秘的な雰囲気が目を引きます。
妙法寺の苔の石段は、境内奥の金剛力士像が祀られている仁王門の先にあります。仁王門から階段を登った先の法華堂(ほっけどう)との間にあり、階段下からも上からも、その美しさを堪能することができます。ただし苔の保護のため、立ち入り禁止となっているので、横にある階段を登りながら様々な角度から苔の階段を眺めてみてください。
妙法寺の苔の階段の魅力
風情を醸し出す苔寺・妙法寺の苔の階段の魅力は、他のお寺ではなかなか感じられない神秘的な美しさを感じられるということではないでしょうか。生い茂る木々や、可憐に咲く花々の美しさとは違う魅力が、苔にはあります。
妙法寺では、一年を通して苔の階段を堪能できますが、新緑の季節は格段の美しさ。濃い緑の苔に魅了される季節です。雨上がりのしっとりとした苔の石段もまた、神秘的な雰囲気が増して心奪われるでしょう。
季節や気候の条件によって異なる魅力を見せてくれる苔寺。苔の魅力にまだ気づいていない人も、ゆったりと妙法寺の境内を歩いてみれば、苔の虜になってしまうかもしれませんね。
苔寺・妙法寺の歴史
妙法寺のある場所は、日蓮聖人と深く関わりがあります。その歴史について年表でまとめました。美しい景観を見せてくれる苔寺としての妙法寺だけではなく、境内の随所で歴史を感じながら巡ってみてください。
建長5(1253)年 | 日蓮聖人が現在の妙法寺がある地を、鎌倉での布教活動の拠点として住み始める。(松葉ヶ谷御小庵と呼ばれた。) |
文応元(1260)年 | この場所で松葉ヶ谷法難(日蓮聖人に反感を持つ武士や僧に焼き討ちにされた事件)が起きる。 |
興国6(1345)年 | 日蓮を開山とする本圀寺(ほんこくじ)が京都に移る。※本圀寺(ほんこくじ)は、日蓮聖人が住んでいた場所に立てられた寺院。 |
延文2(1357)年 | 護良親王(もりながしんのう)の皇子である日叡(にちえい)が、亡き父母の供養と日蓮聖人の遺跡を守るために妙法寺を再建。 |
苔の石段以外にも注目したい!妙法寺の見どころを紹介
苔の寺として有名な妙法寺ですが、歴史あるお寺としてその他にも見どころが多くあります。妙法寺を訪れたら必見の見どころをお伝えします。
本堂
総門の横にある受付を通りまっすぐ進むと見えてくるのが、妙法寺の本堂です。通り抜けることはできませんが、総門も鎌倉市の指定文化財で立派なのでお見逃しなく。
本堂は、緑に囲まれ堂々と建つ様子が印象的な欅造りの建物です。江戸時代に肥後細川家によって寄進されました。妙法寺を訪れたら、受付でお線香を頂けるので、まずは本堂で丁寧にお参りしましょう。
大覚殿
本堂でお参りをした後は、本堂に沿って右に進みます。その奥にあるのが大覚殿(だいかくでん)で、戦国武将の加藤清正公が祀られています。妙法寺では、毎年5月5日に清正公祭が行われ、常勝の清正にあやかって「すべてのことに勝つ」という意味で、「清正公勝守」が授与されます。
大覚殿の辺りには、季節によって花が咲きほっこりした気持ちになれるでしょう。四季を感じ取ってみてください。
仁王門
大覚殿に向かって左手に進むと朱塗りの仁王門(におうもん)が見えます。しっかりと朱塗りされた門、そして睨みを利かせている仁王様が存在感抜群です。朱塗りなのは、江戸時代に将軍を迎えた頃の格式を保っているとのこと。
仁王門の奥には苔の石段が覗いていて、緑と朱のコントラストの美しさに思わず足を止めて見入ってしまいます。
化生窟
仁王門を過ぎて左に進むと、化生窟(けしょうのいわや)というやぐらがあります。ここは、日蓮が妖怪を退治したと伝わる場所です。
法華堂
仁王門の脇を抜け、苔の石段の横を登っていきます。しっとりとした美しさを放つ苔の石段の横の急な階段を登り切ると、水戸徳川家によって建立された法華堂が。
法華堂には、開山である日叡作と言われる「厄除祖師像」が安置されています。さらに、法華堂の前には、日叡が植えたとされるソテツが構えていますので、歴史を感じられるでしょう。
鐘楼と松葉ヶ谷御松庵跡
法華堂から進むと緑に囲まれた鐘楼(しょうろう)があります。鐘楼とは、お寺の鐘である梵鐘(ぼんしょう)を吊るすための建物のこと。緑に囲まれて、美しく佇んでいます。
そこからさらに鐘楼横の石段を登っていった先に、松葉ヶ谷御松庵跡があります。
ここは日蓮聖人が、建長5(1253)年から文永8(1271)年までの18年間、鎌倉での布教活動の拠点としたとされる霊跡です。日蓮聖人はここに庵を構え、国土安穏の実現を目指しました。
大塔宮護良親王のお墓
松葉ヶ谷御松庵跡を正面に見て左に進むと、護良親王の皇子で妙法寺の再建者である日叡上人の母「南の方」のお墓が、右に進むと日叡上人の父「護良親王」のお墓があります。
南の方のお墓に進むには、狭い山道を行くので、足元に注意が必要です。ここでは少しハイキング気分を味わえます。
護良親王のお墓は、登りのくねくねとした急な階段を登り切った場所にあるので、こちらもゆっくりと進んでいきましょう。護良親王のお墓は、緑に囲まれて立派に佇む様子が印象的です。なお、護良親王のお墓とされるものは二階堂の理智光寺跡にもあり、そちらに御骨が収められているとのこと。
裏山からの絶景
護良親王のお墓がある妙法寺の裏山の山頂は、鎌倉市街や海を一望できる開けた景色が広がります。天気が良い日には、富士山を望むこともできるので、山頂まで登り切ったご褒美のような景色を楽しむことができるでしょう。
この絶景も含め、妙法寺は自然を感じられる緑豊かな環境が魅力の一つでもあります。
そして裏山の山頂に向かうには、山道を進む必要が。しかし決して急な道ではありません。お寺を参拝しながら、ちょっとしたハイキング気分を楽しんでみてはいかがでしょうか?ぜひ自然に囲まれてリフレッシュしてみてください。
妙法寺の四季の楽しみ方をご紹介
妙法寺は苔寺として有名なので、新緑の季節が最も魅力的と思われるかもしれませんね。しかし、そのほかの季節にも様々な花が境内を彩っているのです。四季折々の表情を楽しむことのできる、妙法寺の季節の見どころを見ていきましょう。
【春】暖かく優しい空気の中で楽しむ桜やシャガ
妙法寺の春は、桜やシャガなどが境内を華やかに彩ります。鮮やかな朱色の仁王門と桜の共演は、コントラストが美しく目を引きます。総門と仁王門の間に咲く、シナミザクラという桜は3月中旬には見頃を迎えることの多い早咲きの桜です。
ソメイヨシノよりも一足先に春を感じに、妙本寺を訪れてみてはいかがでしょうか?
春の妙法寺には、桜だけでなくシャガやモクレンの花が咲くなど、花が彩り陽気な空気に包まれる春を満喫することができます。
さらに、苔の階段も青々としてくるので、その美しさが格段に増す時期でもあります。
【夏】あじさいや睡蓮をしっとり楽しむ
5月の終わり頃から初夏にかけて、妙法寺の境内で存在感を見せて咲くのがあじさいです。青や濃いピンクなど、色とりどりのあじさいが咲く姿に目を奪われます。境内の歴史的な建造物とあじさいの相性も抜群。タイミングが合えば睡蓮の花を見ることもできるそうです。
梅雨の時期は、しっとりと雨露に濡れたあじさいや苔の階段もしっとりとした雰囲気できれいなのですが、大雨が降ると境内が滑りやすく危ないので休業することもあるとのこと。お知らせを確認してから参拝に出かけることをおすすめします。
夏の時期には、本堂近くに咲くフヨウのピンクやノウゼンカズラのオレンジが可愛らしく、緑の多い境内に映えます。
夏も見どころのある妙法寺ですが、7月中旬から9月中旬は土日祝日のみの拝観となります。
【秋】黄色い絨毯と苔の階段が美しい
秋の妙法寺では、真っ赤に染まるもみじと黄色いいちょうの木が、秋を感じさせてくれます。さらに、いちょうの葉が散ってしまった時には、一段と趣を感じる風景が。それは、散ったいちょうの葉が絨毯のようになった境内・そして苔の階段の風景です。濃い緑の苔の上に、鮮やかな黄色のいちょうの葉が重なる様子が美しいのです。
そして、真っ赤に染まるもみじも必見です。紅葉シーズンは混雑するスポットも多い鎌倉ですが、落ち着いた雰囲気の秋の妙法寺で、ゆったりと紅葉シーズンを満喫してみませんか?
【冬】澄み切った山頂からの景色と可愛らしい梅の花に魅了される
妙法寺は少しハイキング要素があり、裏山の山頂まで山道を登ると見晴らしの良い場所があります。空気が澄んでいる冬場に、ぜひ景色を堪能してみてください。
2月に入ると梅の花が咲き始め、心が和む可愛らしい様子が見られます。濃いピンクや白の梅の花が咲いて、境内に梅の香りが漂いますよ。
そして冬場の苔の階段は、青々とした新緑の時期の様子とは少し異なりますが、静かな佇まいが気持ちを落ち着かせてくれます。
夏と同様に、12月中旬から3月中旬は土日祝日のみの拝観になりますので、ご注意ください。
妙法寺の他にもある苔の美しい鎌倉のお寺
鎌倉では、苔寺としては妙法寺が有名ですが、その他にも苔の風景が魅力のお寺がいくつかあります。金沢街道の近くが多いので、複数のスポットを巡ってみてもいいかもしれません。
歴史あるお寺の中で見る苔の風景は、一段と趣深く感じることができるので、ぜひ鎌倉で苔寺巡りをしてみてはいかがでしょうか?
◆報国寺|竹林と共に眺める美しい苔の風景が魅力
住所:神奈川県鎌倉市浄明寺2-7-4(妙法寺からバスと徒歩で約30分)
◆杉本寺|見事な苔に覆われた石段の絶景に目を奪われる
住所:神奈川県鎌倉市二階堂903(妙法寺からバスと徒歩で約30分)
◆瑞泉寺|緑に囲まれた苔の階段が印象的
住所:神奈川県鎌倉市二階堂710(妙法寺からバスと徒歩で約40分)
◆長谷寺|苔の絨毯の上に並ぶ良縁地蔵に癒される
住所:神奈川県鎌倉市長谷3-11-2(妙法寺からバスまたは電車と徒歩で約30分)
鎌倉の苔寺・妙法寺で苔の階段に魅了される癒しの時間
鎌倉の苔寺として人々を魅了している妙法寺。以前から苔が好き、という人はもちろんのこと、そうでない人も青々とした妙法寺の苔の階段には魅了されるはずです。趣のある、吸い込まれるような魅力のある風景に思わず足を止めてしまうでしょう。
そして、落ち着いた雰囲気の漂う境内では、ゆったりとした時間を過ごすことができるのも魅力のお寺です。少し頑張って裏山を登れば開けた絶景に出会えるのも、また嬉しいポイント。苔の階段、季節の花、そして裏山から見る絶景を楽しみにぜひ一度訪れてみてください。
寺院名 | 妙法寺 |
住所 | 神奈川県鎌倉市大町4-7-4 |
電話番号 | 0467-22-5813 |
拝観時間 | 9:30~16:30 ※12月第2週~3月中旬、7月第2週~9月中旬の期間は、土・日・祝のみの拝観 |
拝観料 | 中学生以上:300円 小学生:200円 |