「眼に効く寺」本覚寺のしだれ桜

2020.03.25

「眼に効く寺」本覚寺

鎌倉駅東口から徒歩約5分。若宮大路を渡り、鎌倉郵便局の脇道を進んだところにあるのが本覚寺です。本覚寺のある場所は鎌倉幕府の裏鬼門にあたり、幕府を作った源頼朝が、鎮守として夷堂を建てた場所といわれているとのことです。
夷堂があった場所に足利持氏が寺を建て、日出に寄進した寺院が本覚寺であるそうです。

入り口の山門では、両脇に堂々とした仁王像が鎮座しています。

ここ本覚寺は、二代目住職が日朝上人であったため、「日朝さま」の愛称で親しまれています。日朝は「眼を治す仏」と言われたたため、本覚寺は眼病に効く寺として知られています。また日朝が身延山から日蓮の遺骨を分けて移したため、「東身延」と呼ばれています。

商売繁盛の神様がまつられた「夷堂」

仁王像をくぐると右手にある八角形の建物が「夷堂」です。

夷堂のある場所は、鎌倉幕府の裏鬼門に当たるため、源頼朝が守り神として、七福神のひとつである夷神をまつりました。
商売繁盛や五穀豊穣の神様でもある夷様。正月三が日には「初えびす」、1月10日に「本えびす」が行われ、商売繁盛を祈願する参拝客が各地から訪れ、大変な賑わいとなります。

またここ本覚寺は、浄智寺の布袋様、鶴岡八幡宮および江島神社の弁天様、宝戒寺の毘沙門天様、妙隆寺の寿老人様、長谷寺の大黒様、御霊神社の福禄寿様とともに、鎌倉江の島七福神めぐりのコースにも含まれています。
お正月には、七福神めぐりを楽しむ参拝客も多く訪れます。
境内では、御朱印をいただくこともできます(300円)。取材の際に御朱印をいただいたところ、「夷神」と書いてくださいました

本覚寺でしか手に入らないのが、お守りの「にぎり福」。
「愛、健、財、学、福」が握り込まれ、一日一回手のひらで握ってご利益を求めるというお守りです。
可愛らしい表情をした「にぎり福」は、一つ一つ手作り。今や海外からの観光客にも人気のお守りとなっています。

本堂横の見事な枝垂れ桜

夷堂を右後ろに境内を進むと、中央にあるのが本堂。
こちらの本堂には、ご本尊である釈迦三尊像、日蓮像・日朝像が安置されています。

本堂の手前にあるのが、鐘楼です。

そして本堂の右手には、祖師日蓮の分骨堂が建っています。

本堂と分骨堂の間には、立派な枝垂れ桜の木が鎮座しています。力強く広がる幹から、繊細な枝が四方に垂れ下がる樹形は見事です。
お寺の方に伺ったところ、正確な樹齢は不明なものの、おそらく百数十年は経っているのでは、とのことでした。

ソメイヨシノが咲き始める頃に満開となる枝垂れ桜。取材に訪れた3月下旬は、少し葉桜も出始めていましたが、それでも繊細な薄紅色の桜を楽しむことができました。

青い空に映える淡い桃色の花びら。風が吹くと、太い幹から枝垂れた無数の枝が柔らかく揺れ、あたりに桜吹雪が舞い散ります。桜の下にしばらく立っていると、心地よい春の空気を感じることができます。

枝垂れ桜の周りには、ソメイヨシノなど別の種類の桜も数種類植えられています。満開の枝垂れ桜からバトンタッチされるように、少しずつほころび始める蕾から、繊細な花びらが顔をのぞかせていました。

桜を見守るしあわせ地蔵

枝垂れ桜の足元に佇むのは、「しあわせ地蔵」。赤い頭巾が目を引く、静かで可愛らしい表情をしたお地蔵様です。

お地蔵様の周りにはみずみずしく色とりどりなお花が手向けられています。
丁寧に並べられた一円玉から、このお地蔵様が参拝客に大切に見守られている様子が伝わってきます。

境内の至るところで顔を出す小さな命

境内をゆっくり歩きながら足元を見下ろすと、スイセンや木瓜など、細やかに手をかけられた様々な種類の植物を楽しむことができます。

夷堂の脇には、ノキシノブが着生する立派な栴檀の木も。

夷堂の階段のちょっとした隙間でも、小さな緑たちが待ってましたとばかりに顔を出していました。

山門の前の夷堂橋

山門を外に出たところに流れる滑川にかかっているのが、夷堂橋です。

碑によると、この橋は鎌倉十橋の一つであり、この橋のあたりに、かつての夷堂があったとのことです。

川の土手では菜の花やサクラソウなど、春を感じさせる華やかな花々が開花していました。

足元を見下ろすと、青く小さい花をつけたオオイヌノフグリや、ピンクの蕾をつけるヒメオドリコソウ、可愛らしい黄色い花を咲かせたカタバミ。境内に植えられた植物だけでなく、お寺周辺の道の足元も、注意して眺めてみると、春の訪れをひしひしと感じることができます。

広々とした境内を彩る木々や花、そして境内のちょっとした隙間やお寺の周辺に芽吹く緑。ぜひ植物を通して季節の変化を感じながら、散策してみてはいかがでしょうか。

参考文献
『神奈川県の歴史散歩(下)鎌倉・湘南・足柄』(神奈川県高等学校教科研究会社会科部会歴史文化会編著・山川出版社)
鎌倉市ホームページ

本覚寺
〒2248-0006 鎌倉市小町1丁目12-12
TEL 0467-22-0490 定休日 なし
拝観時間 境内自由(寺事務 9:00~16:00)
拝観料 志納 駐車場 なし

記事を書いた人
逗子在住。外資系出版社勤務の傍ら、2016年よりライターとして活動開始。2020年2月よりフリーランス。街角の園芸活動や植物に魅了され「路上園芸学会」を名乗り魅力を発信。 ウェブメディアを中心に、街歩きや植物に関する取材記事、インタビュー記事などを執筆。2016年よりデザイナーの藤田泰実とともに路上観察ユニット「SABOTENS」としても活動。組み合わせると路上園芸の風景が作れる「家ンゲイはんこ」の制作や、国内外での作品展示・グッズ販売を行う。