鎌倉駅東口から歩いて10分ほどの場所にある妙本寺。多くの人で賑わう鎌倉駅から近いにもかかわらず、一歩足を踏み入れると、まるで別世界に来たような静けさに癒されるお寺です。
歴史あるお寺であり、四季折々の風景も楽しめる自然豊かな場所でもあります。妙本寺の歴史、見どころ、そして季節ごとの魅力をお伝えします。
妙本寺の歴史
妙本寺の創建は1260年(文応元年)。開山はは日蓮聖人、開基は比企大学三郎能本(よしもと)と伝えられています。比企能本は順徳天皇に支えた儒学者で、鎌倉時代に鎌倉殿(将軍)を支えた御家人の一人であった比企能員(よしかず)の末子です。
妙本寺のある場所は比企ヶ谷(ひきがやつ)と呼ばれ、元は比企能員の一族が住む谷戸(やと・谷状の地形)でした。しかしながら、比企一族は1203年(建仁3年)に北条一族によって滅ぼされてしまい、その争いは『比企の乱』と言われています。
その時には幼く京都にいたことで生き延びた比企能本が、後に鎌倉で布教をしていた日蓮聖人に自分の屋敷を献上したことが妙本寺の始まりとなりました。
美しくゆったりとした寺院 妙本寺の見どころを紹介
妙本寺は四季折々の風景が美しいお寺ですが、その他にも見どころが多くあります。比企一族との繋がりを強く感じられる場所も多いので、歴史を感じながら巡ってみてはいかがでしょうか?
本堂
妙本寺の総門を抜けると、左手側に方丈門があり、その先の階段を登ると本堂が見えてきます。方丈門の周りにも、四季折々の花が出迎えてくれるのでお見逃しなく。サルスベリやつつじ、あじさいなどの花が楽しめます。
本堂は、ご本尊を安置するお堂の総称。妙本寺の本堂は緑に囲まれて、ひっそりと佇みます。
二天門(にてんもん)
妙本寺の総門を抜けると左手に方丈門がありますが、総門からまっすぐ進み石段を上がると、もう一つの門である二天門が現れます。朱色に塗られた二天門の堂々とした様子は目を引くでしょう。
二天門の近くには楓があり、夏には青々とした新緑、そして秋には紅葉が美しく彩ります。さらに二天門自体にも様々な彫刻が施され美しいです。特に中央に彫られている龍の彫刻が見事なので、ぜひ見上げてみてください。
祖師堂(そしどう)
二天門を抜けて目の前に現れるのが、日蓮宗の開祖である日蓮聖人を祀る祖師堂。鎌倉では最大規模の大きさを誇るお堂であり、その存在感に圧倒されます。
桜や海棠、新緑、そして紅葉とどの季節をとっても、祖師堂辺りは趣があり美しい風景を見せてくれます。
この祖師堂が建つ場所は、比企ヶ谷の名前の由来となった「比企の尼」が住んでいた場所。「比企の尼」は、源頼朝の乳母だった人です。さらには、源頼朝の正室・北条政子が2代将軍・頼家を産んだ場所でもあると伝えられています。
日蓮聖人銅像(にちれんしょうどうぞう)
祖師堂に向かって左側にあるのは、日蓮聖人の銅像です。
日蓮聖人は、1222年(貞応元年)に安房小湊に生まれ、16歳で出家、天変地異や飢餓に苦しむ人々を見て心を痛めたそうです。1253年(建長5年)に立教開宗の宣言をした後、当時の政治の中心であった鎌倉の人々に教えを説きました。
妙本寺にある銅像は、平成14年に日蓮聖人立教開宗750周年、及び鎌倉布教750年を記念して建てられたものです。
比企一族供養塔(ひきいちぞくのはか)
妙本寺の正式名称は「長興山妙本寺」。これは日蓮聖人が直々に付けた名前とのことで、「長興」「妙本」それぞれ、代々鎌倉殿を支えていた比企一族の党首(比企能員)とその夫人に法号として贈られたのでした。比企一族は、将軍家と親密になりすぎたことで北条家によって滅ぼされ、多くの命が妙本寺のある比企ヶ谷で失われたと伝えられます。
その精霊の供養のために建てられたのが、祖師堂の右手にある比企一族供養塔です。
鐘楼堂(しょうろうどう)
鐘楼とは、梵鐘(ぼんしょう)を吊るして、お寺の行事の開始時や時を告げる鐘を突くためのお堂のこと。妙本寺の鐘楼堂は関東大震災で倒壊したり、第二次世界大戦で供出されたりしたものの、昭和35年に復興して以来、日々美しい音を鳴り響かせています。
紅葉の時期には、真っ赤なもみじに囲まれて美しい光景を見せてくれる場所でもあります。
蛇苦止堂(じゃくしどう)
比企ヶ谷妙本寺の守り神である蛇苦止明神(じゃくしみょうじん)を祀るお堂である蛇苦止堂。総門から左に進んだ場所にあります。比企の乱の際に火に包まれた屋敷から逃れるために、讃岐局が飛び込んだとされている井戸が残っています。讃岐局とは比企能員の娘で、2代将軍である頼家の側室となりました。
蛇苦止明神は、若狭局を守護神として、今でも大切にされています。
寺務所・書院
妙本寺の寺務所・書院は、本堂の隣にあります。関東大震災後に再建されたのが、今の寺務所と書院です。
御朱印やお守り、お札の授与や墓参用の線香もこちらで受け付けてくれます。そのほか、写経や研修会などの様々な催しにも使われている場所です。
授与品
妙本寺では、数種類のお守りやお札などを授与していただけます。
- 大學守
- 病気平癒守
- 大黒天守
- 蛇苦止大明神紙札 …など
大學守は、開基である比企大學三郎能本にちなんだお守りで、運気上昇にご利益があるとされています。不遇な人生を送っていた比企大學三郎能本が、日蓮聖人と法華経に出会い好運気を得られたという話にちなんでいます。
写経体験
お釈迦様が示された修行の一つである写経。古くから仏道修行で行われていますが、徐々に広まっていき、現在では多くの人に親しまれています。
妙本寺では、お香の香りが漂う書院の一室の落ち着いた空間で体験することができるのが魅力。最上の教えとされている「法華経」を写経します。
道具一式を借りることができる他、僧侶の方が作法や心構えについても説明してくださるので、初心者でも安心して参加することができますよ。
四季の楽しみ方をご紹介
妙本寺は、落ち着いた雰囲気や趣ある境内に多くの人が魅了されますが、四季折々の風景も見逃せない見どころとなっています。季節ごとに境内を彩る花々や植物を紹介します。
【春】美しい花々が咲き誇る穏やかな時が流れる境内
春の妙本寺では、ソメイヨシノやカイドウ、八重桜が次々と咲き誇り、これでもかというほどに春を満喫させてくれます。
薄ピンクが儚げで美しいソメイヨシノ、少し濃いピンクで存在感を見せるカイドウ、そしてポンポンと丸っこく花びらが密集する様子が愛らしい八重桜と、趣ある境内の愛称は抜群です。ウグイスの鳴き声と共に、華やいだ境内でゆったりとした時間を楽しむことができます。鎌倉駅から徒歩10分ほどの場所とは思えない、穏やかな雰囲気を味わうことができます。
また、白に青が爽やかな印象のシャガの花も咲き乱れます。桜やカイドウを見上げることに夢中になりがちな春の妙本寺ですが、シャガは足元に群生するので、そちらにも注目してみてくださいね。
【夏】あじさいの穴場でゆったりと初夏を満喫
初夏のあじさいシーズンには、妙本寺にもあじさいが咲きます。二天門の近くや方丈門を抜けた先の石段の両脇にもあじさいが見られます。石段とあじさいという風情を感じる組み合わせに心を奪われるでしょう。妙本寺の境内では、数カ所に分かれてあじさいが咲くので、じっくりとあじさい散策してみてください。
また、夏には色鮮やかなオレンジ色の花が特徴的なノウゼンカズラも咲きます。二天門の近くに堂々と咲き誇るノウゼンカズラもお見逃しなく。
多くの木々がある妙本寺は、青々とした新緑も見どころとなっています。暑い中妙本寺を訪れると、涼しげで爽やかな空間で癒しの時間を過ごすことができますよ。
【秋】赤や黄色に染まる木々に秋を感じる境内
妙本寺では、秋の風景もしっかりと堪能することができます。真っ赤に染まるもみじや、黄色い絨毯が趣を感じさせるイチョウの木。歴史ある境内の各所で美しい姿を見せてくれますよ。秋の妙本寺の境内は、特に心が落ち着く空間となります。
鎌倉の他のスポットと比べると、見頃が少し遅いこともあり、紅葉時期を逃してしまいそう!と思ったら寄ってみるといいかもしれません。歴史あるお寺と紅葉の幻想的な雰囲気を楽しんでください。
【冬】雪化粧や梅の花で冬まで満喫
冬のお寺というと少し寂しい印象があるかもしれませんが、妙本寺では、大晦日には除夜の鐘を撞くことができたり、雪化粧をすると一気に風情感じる空間となったり、冬も魅力が溢れています。
さらに、2月中旬頃が見頃となる梅の花が咲くと、境内が一気に春に近づき華やかになります。妙本寺には紅白の梅の花が植えられていますよ。
穏やかな時が流れる妙本寺で癒しの時間を
自然が溢れ、四季それぞれに美しい景色を見せてくれる妙本寺。
歴史を辿ると多くのことを考えさせられる土地・比企ヶ谷にある妙本寺は、穴場的スポットでもあるので、静かな時間を過ごすことができます。
鎌倉観光をしていて、癒されたいと感じたらぜひ訪れてみてください。歴史を感じながら、季節の花々を胆嚢することができるでしょう。
スポット名 | 妙本寺 |
住所 | 神奈川県鎌倉市大町1丁目15-1 |
アクセス | JR「鎌倉駅」より約10分 |
電話番号 | 0467-22-0777 |
拝観時間 | 9:00〜16:00 |
URL | https://www.myohonji.or.jp/ |