公園

日帰りで楽しむ身近な大自然 鎌倉広町緑地

2023.03.08

鎌倉山のあたりを歩いていたある時、小高い山の上の住宅街に囲まれるように、まるで雲海のような森がずっと向こうのほうまで広がっていることに気付きました。

「なんだここは!」と気になって調べたところ、その森が「鎌倉広町緑地」と呼ばれる都市公園だと知りました。
この記事では、森のような広大な都市公園「鎌倉広町緑地」の見どころをお伝えします。

東京ドーム10個分の森!

鎌倉広町緑地は、鎌倉市南西部に広がる約48ヘクタール(東京ドーム約10個分)もの広さの都市林です。
もともとここは、住宅開発が進められる予定の場所だったそう。
市民の緑地保全運動が後押しとなり、島のように残された豊かな緑地を都市公園(都市林)として残すこととなりました。

都市公園として開園したのは2015年4月。
現在も公園の管理運営に多くの市民団体が関わり、緑地の自然環境や里山景観が守られています。

湘南モノレール西鎌倉駅から徒歩10分

とにかく広大な鎌倉広町緑地には複数の入口がありますが、メインエントランスの最寄駅は湘南モノレールの西鎌倉駅です。
湘南モノレールは、大船駅と湘南江の島駅を15分程度で走行する、世界でも珍しい「懸垂式」のモノレール。

鎌倉広町緑地へ行くには、西鎌倉駅で下車。駅のすぐ横にスーパーマーケットがあるので、飲み物や食べ物が必要な場合は、ここで確保しておきましょう。

駅を出たら、歩いて緑地まで向かいます。
道中、住宅街の擁壁を彩っていたのはペラペラヨメナ。花が白から赤に変化し、赤白が同時に咲いているように見えることから「ゲンペイコギク(源平小菊)」という別名もついている植物です。

住宅街を10分程度歩いていくと、メインエントランスに到着。

入口広場にある管理事務所では、散策マップや季節ごとの植物の資料などが入手できます。緑地内の唯一のお手洗いも管理事務所にあるので、ここで済ませておきましょう。

鎌倉広町緑地のシンボルツリー・大エノキ

メインエントランスから緑地内を散策するには複数のルートがありますが、今回は左手に進んでみます。
入り口からすぐの左手には、「御所谷」という谷戸。左手に小川が流れ、右手にはこんもりとした山。その間の平地に、畑や田んぼが広がっています。

市民ボランティアの方々との協働で、かつてここに広がっていた里山風景の復元をはかっており、谷戸の自然が残された貴重な場所です。

偶然出会った地元の方にお話を伺ったところ、かつてこのあたりには田んぼや畑が広がっていたそう。原風景を感じるのどかな空気の中で、親子連れが散歩を楽しんだり、子どもが伸び伸びと走り回って遊ぶ姿が見えます。

川沿いの散策路の脇には、アカメガシワやメタセコイア、ヤマグワなどの木々。伸び伸び育つ木を見られるのも、公園の良さです。

その少し先にあるのが、エノキの大木。低い位置から太い幹が、四方にうねるように株立ちで伸びる迫力ある樹形で、鎌倉広町緑地のシンボルツリーともなっています。

葉の落ちた冬には、そのユニークな樹形をたっぷり楽しめますが、青々と葉が茂る季節には、気持ちの良い緑陰を堪能できます。

中世の遺構・石切場

大エノキまでは畑や田んぼの開けた空間ですが、そこからさらに奥へ進むと、上も左右もぐっと緑が深くなります。

風で草木が揺れる音と鳥の鳴き声を全身に浴びながら進んでいくと、山道を登ることができます。ここから勾配がきつくなるので、足元には十分お気をつけください。

尾根道では足元で木の根が網目状に這っており、迫力があります。

左右の木々の間を通り抜ける風を感じつつさらに登っていくと、左手に岩が垂直に切り立った場所が見えてきます。
ここはかつて石材を切り出す「石切場」だったそう。

推定樹齢約200年の大桜

さらに山道を登っていくと、鎌倉山方面から入れる入口があります。木々のすぐ向こうには住宅街が広がっているのが、なんだか不思議な気分。

木漏れ日を感じながら山道を歩いていくと、「大桜」の案内板が見えてきます。

案内に従い山道を進んでいくと見えるのが、桜の大木。オオシマザクラとヤマザクラとの自然交配種ともいわれるこの大木は、なんと推定樹齢200年強。
樹高は約16m、根元近くの周囲は約5.4m。8本の株立ちとなっています。

この桜は「稚児桜」とも呼ばれています。かつて津村(鎌倉市津)の長者の子ども16人が、5つの頭を持つ五頭龍(ごずりゅう)に飲み込まれてしまい、人々がこの桜を塚になぞらえたことが名前の由来となっているそうです。

絶景!相模湾や富士山の眺望スポット

桜をたっぷり堪能したらもと来た道へ戻り、さらに尾根道を進んでいきます。背の高いササのトンネルは、「となりのトトロ」のワンシーンとして登場しそうな風景。

鎌倉広町緑地の尾根道には、相模湾や富士山が一望できる眺望スポットも点在しています。
緑深い山道を抜けたあと、向こうのほうまで開けた気持ちの良い絶景を味わえる瞬間は、感動的。「三方山に囲まれている」という鎌倉の地形も実感できます。

尾根道を進み現れる「七里ヶ浜入口」のすぐ近くには、キリの大木が。俗称「桐見台」と呼ぶ人もいるそう。
街中でも時たま見ることができる木ですが、ここまで大きくなった姿は壮観。毎年5月のゴールデンウィークの頃、薄紫色の花が見頃となります。

さらに尾根道を進んでいくと、最初のメインエントランスへ出られますが、せっかくなので七里ヶ浜方面から外に出てみることにしました。

外に出るといきなり整然とした住宅街が現れ、いままでいた場所がまるで異世界のような気持ちになります。

広い坂道を降りていくと、七里ヶ浜の海岸が見えてきます。
しばらく歩くと江ノ電の駅が見えてくるので、七里ヶ浜駅から帰路につくことができます。

おわりに

市街地からほど近い場所で、豊かな緑を堪能することのできる鎌倉広町緑地。
緑地内はぐるりと散策すると1時間半〜2時間程度。緑地の周囲は住宅地に囲まれており、徒歩や自転車で気軽に訪れることができるほか、近県からでも日帰りで往復できる、身近な森です。
ぜひこれからの時期、人混みから少し離れ、森の中の緑陰で涼んでみてはいかがでしょうか。

スポット名鎌倉広町緑地
住所〒248-0033
神奈川県鎌倉市津1133
電話番号0467-32-5112
開園時間常時開放(管理事務所:8:30〜17:15)
入場料無料
駐車場なし
URLhttp://www.kamakurahiromachi.com/
記事を書いた人
逗子在住。外資系出版社勤務の傍ら、2016年よりライターとして活動開始。2020年2月よりフリーランス。街角の園芸活動や植物に魅了され「路上園芸学会」を名乗り魅力を発信。 ウェブメディアを中心に、街歩きや植物に関する取材記事、インタビュー記事などを執筆。2016年よりデザイナーの藤田泰実とともに路上観察ユニット「SABOTENS」としても活動。組み合わせると路上園芸の風景が作れる「家ンゲイはんこ」の制作や、国内外での作品展示・グッズ販売を行う。