ぼんぼり祭とは、鶴岡八幡宮で立秋の前日から3日間(年により4日間)開催される、鎌倉の風物詩ともいえるお祭りです。
鎌倉在住の画家・書家・学者などの著名人が揮毫した書画を仕立てたぼんぼりが「夏越祭」・「立秋祭」・「実朝祭」の行われる間に参道に飾られ、日没になると巫女によってそのひとつひとつに明かりが灯されます。
ずらりと並べられたぼんぼりは、その数なんと約400点。
豊かな緑や荘厳な社殿と相まって、幻想的でロマンチックな風景が広がります。家族、友達同士で行くほか、デートにもぴったりですよ。
ぜひ鎌倉の夏の風物詩を見に行ってみませんか?
期間 | 2022年8月6日(土)~2022年8月9日(火) |
開門・閉門時間 | 5:00開門・21:00閉門 |
場所 | 鶴岡八幡宮(神奈川県鎌倉市雪ノ下2-1-31) |
アクセス | JR・江ノ電鎌倉駅から徒歩10分 |
ぼんぼり祭の歴史
ぼんぼり祭のぼんぼりに絵描かれているのは、彩り豊かな風景画や人物画、書画、メッセージ性のこもったものなど、それぞれに個性が光るものばかりなので、ひとつひとつじっくり眺めるもよし、ぼんやりとしたたくさんの灯りを楽しむのもよしと、さまざまな味わい方が可能です。
まずは、ぼんぼり祭の歴史から見ていきましょう。
夏の神社仏閣を盛り上げるためにスタート
ぼんぼり祭りの始まりは1938年。当時鎌倉ペンクラブの会長だった久米正雄をはじめとする鎌倉在住の鎌倉文士と呼ばれる名士によって始められました。
当時、夏の鎌倉は海水浴客で賑わっていましたが、一方で神社仏閣を訪れる観光客は少なく閑散としていました。
そのため、文化的な夏の鎌倉を楽しんでもらいたいとの思いで、夏越祭という古式祓いの祭事の時期に合わせて始められたのです。
今では多くの人が集まる鎌倉の神社仏閣も、人を集める努力をしていたとは驚きですね。
戦中・戦後の時代
戦時中、紙の配給が限られていた時代にも、ぼんぼり祭には多くの書画が揮毫されていました。
1945年の終戦直後には、ぼんぼりに灯を入れる行為が禁じられたため、色紙や短冊の作品が揮毫されており、その歴史は形を変えつつも絶えることなく続いてきました。
戦後には、鎌倉文士だけでなく、漫画家や、大船の松竹撮影所に出入りしていた芸能関係者など、バラエティ豊かな揮毫者によって書画が奉納されるようになりました。
夏越祭・立秋祭・実朝祭とは?
立秋の前日から8月9日にかけて開催されるぼんぼり祭。
段葛から鶴岡八幡宮に明かりが灯ったぼんぼりが飾られるだけでなく、鶴岡八幡宮でお祭りが執り行われます。
3つのお祭りについて解説していきますよ。
夏越祭(なごしさい)
夏越祭(なごしさい)は、昭和13年に始められたお祭り。
立秋の日前日・15時より開催されます。古来、夏の終わりに行う祓「夏越の祓」を、源平池のほとりで行った後、参道で「芽の輪くぐり」を行い、疫病・災禍を祓い鎮め、天下泰平・五穀豊穣を祈ります。
舞殿では、巫女により「夏越の舞」が奉納されます。
立秋祭(りっしゅうさい)
立秋祭(りっしゅうさい)は、昭和25年より始められました。
立秋の日の17時より開催されます。夏の無事を感謝し、実りの秋の訪れを奉告するお祭りで、御神前には、神域まで育まれた鈴虫が供えられます。
何とも荘厳な雰囲気が感じられるでしょう。
過去には夏越祭・立秋祭では藤野すみれ社中・西川翠扇社中による日本舞踊が行われています。
実朝祭(さねともさい)
実朝祭(さねともさい)は、昭和17年より開始されました。
鎌倉幕府三代将軍・源実朝公の誕生日に白旗神社にて執り行うお祭りです。
8月9日の10時より開催されます。
実朝公は建久3年8月9日に源頼朝の四男として生まれています。
実朝公の遺徳を偲ぶとともに、金槐和歌集を遺すなど、文化芸術に造詣の深い公にちなみ、俳句会や短歌会も開催されます。
神前には、選ばれた俳句や短歌などが献上されます。
さらに、過去には鎌倉華道会・鎌倉国際華道会による終日献華会が行われていました。
実朝祭が行われる白旗神社は、朱塗りの社殿が多い鶴岡八幡宮において、黒塗りの社殿なのがとても印象的ですね。
神職や巫女の現れる祭りは神聖で圧巻といえるでしょう。
普段見ることのできない荘厳な行事を、ぜひ見に行ってみてはいかがでしょうか。
描くのはどんな人?
おもに、鎌倉にゆかりのある画家・文人等が揮毫します。
1938年に祭りが始まった当時は、書画は150点ほどでしたが、近年では毎年400点ほどの書画が奉納されています。約80年の歴史の中で、これまでに揮毫された原画は20,000点を超えるほどです。
現在に至るまでに、以下のような方々が揮毫していました。
伊藤深水(日本画家・版画家)・太田水穂(歌人・国文学者)・尾上多賀之丞(歌舞伎役者)・岡本太郎(芸術家)・小津安二郎(映画監督)・片岡球子(画家)・鏑木清方(画家)・川端康成(小説家)・北大路廬山人(陶芸家)・久米正雄(小説家)・佐田啓二(俳優)・清水崑(漫画家)・鈴木大拙(心理学者)・高濱虚子(小説家)・高見順(小説家)・高峰三枝子(女優)・武原はん(芸妓)・田中絹代(女優)・永井龍男(小説家)・長谷川如是閑(ジャーナリスト)・星野立子(俳人)・三好達治(詩人)・村山知義(小説家)・横山隆一(漫画家)・吉屋信子(小説家)
最近では、みのもんた(タレント)・中村獅童(歌舞伎役者)・養老孟司(解剖学者)・水木一郎(歌手)・さかなクン(タレント)・榎木孝明(俳優)・蛭子能収(漫画家)・三浦大輔(監督)・庵野秀明(映画監督)・柳美里(小説家)・安野モヨコ(漫画家)・竹中直人(俳優)・井上ひさし(小説家)・鈴木英人(イラストレーター)・折原みと(漫画家)など、バラエティに富んだ方々が揮毫。
みんなで鎌倉を盛り上げていこうという気概が伝わってきますね。
2021年開催時は、大河ドラマ「鎌倉の13人」の脚本を手掛ける三谷幸喜がぼんぼり団扇を描いています。
2022年は大河ドラマ『鎌倉殿の13人』のキャストが描いたぼんぼりも!
その他有名人のぼんぼりも
ぼんぼり祭が行われる鶴岡八幡宮とはどんな神社?
鶴岡八幡宮は神奈川県鎌倉市雪ノ下にある神社で、別称として鎌倉八幡宮とも呼ばれています。
1063年8月に河内国を本拠地とする河内源氏2代目の源頼義が、前九年の役での戦勝を祈願した京都の石清水八幡宮護国寺を鎌倉の油井郷鶴岡に鶴岡若宮として勧請したのが始まりといわれています。
1191年に火災にあいましたが、頼朝は後ろの山の中腹を切開き、あらためて石清水八幡宮の分霊を勧請して装い新たに鶴岡八幡宮を創建し、ほぼ現在の上下両宮配置となりました。
頼朝の死後も執権を務めた北条氏をはじめ、足利氏や豊臣秀吉・徳川氏などの時の最高権力者も再建や復興に努めるなど、時代を問わず篤い崇敬を受けている、鎌倉のシンボル的存在の神社です。
祭神は八幡大神とされる応神天皇・神功皇后・比売神の三柱。
境内の見どころ
本宮は文政11年に徳川家斉が再建した流権現造で、国の需要文化財に指定されています。
61段の大石段上にあり、登りきると桜門とその奥に拝殿とつながった本宮をみることができます。
また、宝物殿では鶴岡八幡宮ゆかりのみこし・武具・工芸品などを展示しており、毎年正月には企画展が開催されていますよ。
大石段を下りたすぐそばには祈祷受付と授与所があります。
こちらでは、おみくじや御朱印が可能。おみくじは通常のものと鳩みくじがあります。
鳩みくじには全7色から選べるかわいらしい鳩の根付ストラップがついており、とても人気がありますよ。
境内入口には、源頼朝が臨時別当の専光房良暹と大庭景義に命じて掘らせた「源平池」と称する、左右2つに分かれた池があります。源氏池には島が3つ、平家池には島が4つ浮かび、それぞれ産(三)と死(四)を表すといわれています。
池には鯉やすっぽんが生息し、水鳥も多いのが特徴です。夏期には蓮の花が一面を覆い、美しい風景をみることができるのもうれしいポイントですね。
源氏池のほとりにはぼたん庭園が設けられています。季節ごとにさまざまな牡丹をみることができるので、何度も足を運びたくなること間違いなしでしよう。
対岸には1950年からの歴史ある鶴岡幼稚園があり、開園中は境内の敷地を臨時に仕切って運動場として使用しています。
太鼓橋も見どころの1つ。太鼓橋は三の鳥居の奥にある橋で、横から見ると太鼓のように橋が非常に反っているのが名前の由来です。勾配はなんど30度もあり、かながわの橋100選にも選ばれています。現在は立ち入り禁止となっており、渡ることはできませんが、貴重な橋を見られるのも、鶴岡八幡宮ならでは。
季節によって、自然との美しい調和を感じられるのも大きな魅力。春は源平池の桜、夏は源平池の蓮、秋は白幡神社の紅葉、冬は神苑ぼたん庭園の牡丹と、一年を通してさまざまな表情を見せてくれるのもうれしいところですね。
駅から徒歩10分とアクセスがよく、周辺にはカフェや食事処も多くあります。海にもほど近いので、鎌倉散策の際には足を運んでみてはいかがでしょうか。
神前結婚式の舞台としても
四季折々の美しい花や豊かな緑を楽しめる鶴岡八幡宮では、境内の中心部である舞殿と、本宮の御子神を祀る若宮で挙式をすることもできます。
舞殿での挙式は開放的な空間でたくさんの人に祝福してもらえます。さらに、若宮での挙式は、歴史ある重要文化財指定の社殿のなかで、厳粛な空気を味わうことができますよ。
また、1日1組限定で、日の入りの時刻に行われる幸あかり式は、幻想的な雰囲気。
特別で忘れられない1日となること間違いなしでしょう。
鎌倉文華館 鶴岡ミュージアムにも行ってみよう!
鶴岡八幡宮の境内に建てられている鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム。こちらの建物は、1951年に開館した、神奈川県立近代美術館の旧鎌倉館を継承したものです。さわやかさのある白い建物は、周りの風景とも溶け合い、心地よい空間として存在しています。
鶴岡八幡宮の歴史を軸に、鎌倉の魅力を紹介する季節展示や1つのテーマを掘り下げた特別展を行ない、鎌倉の新たな文化発信拠点を目指しています。
敷地内にはミュージアムのほか、ここでしか買えない限定オリジナルグッズの揃ったミュージアムショップも併設されており、お土産にもぴったり。さらに、開放的な空間のカフェや老舗料亭日影茶屋が監修する和モダン茶寮などがあります。
さらに、源氏池休憩所や神苑ぼたん庭園など、散歩しながら自然を感じられる絶好の場所を巡るのもよいでしょう。
「鎌倉の13人 大河ドラマ館」開催中
現在は、「鎌倉の13人 大河ドラマ館」という展示が開催されています。
(期間:2022年3月1日~2023年1月9日)
実物展示と映像展示による、ここでしか見られない展示が多数あります。大河ドラマのファンだけでなく、歴史好きな方や鎌倉好きの方々も必見ですよ。
過去の展示
過去には、「鶴岡八幡宮の名刀」・「雪洞100選」・「鶴岡八幡宮鎌倉彫名品展」・「鶴岡八幡宮と文士たち」・「ぼんぼり祭の誕生1938-1955」など、鶴岡八幡宮にゆかりのあるものや、ぼんぼり祭にちなんだ特別展が開催されていました。
鶴岡ミュージアムの歴史
1949年6月に、当時の神奈川県知事であった内山岩太郎のもとに神奈川県在住の美術家や学者から美術館を要望する声があがり、「神奈川県美術家懇話会」が設立されます。
用地が検討された結果、ここ鶴岡八幡宮に建設されることになりました。
建築家・坂倉準三の設計で日本初の公立近代美術館として神奈川県立近代美術館は開館しました。
開館から65年間にわたる鎌倉館での活動において開催された展覧会は525本を数えましたが、土地の借地契約満了に伴い2016年1月31日をもって旧館での展覧会活動は終了し、同年3月31日に閉館。
その後、旧館は神奈川県指定重要文化財(建造物)に指定され、神奈川県から鶴岡八幡宮に土地の返還と合わせて無償譲渡された後、2019年6月、新しい使命をもった鎌倉文華館 鶴岡ミュージアムとして開館しました。
美しい自然に囲まれ、鎌倉の文化に触れられる施設です。
鶴岡八幡宮に来た際は、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
住所 | 〒248-0005 神奈川県鎌倉市雪ノ下2-1-53(鶴岡八幡宮敷地内) |
電話番号 | 0467-55-9030 |
営業時間 | 鎌倉文華館 鶴岡ミュージアム・ミュージアムショップ:10:00~16:30 ※8月6日(土)~8月9日(火)9:30~19:30(19:00最終入場) カフェ:10:00~17:00 |
定休日 | 無休(展示替え休館日除く) |
入館料 | 展示内容によって異なる |
ホームページ | https://tsurugaokamuseum.jp/index.html(鶴岡ミュージアム) https://taiga-kamakura.jp/(鎌倉の13人 大河ドラマ館) |
鶴岡八幡宮のぼんぼり祭で夏の鎌倉を満喫♪
鎌倉・夏の風物詩、ぼんぼり祭についてお伝えしました。
夏の夜の幻想的な雰囲気に、ぜひ浸りに来てくださいね。
また、ぼんぼり祭が行われる鶴岡八幡宮は見どころがたくさんあります。
2022年はミュージアムで『鎌倉の13人 大河ドラマ館』の展示が開催しています!
ぼんぼり祭と併せて訪れてみてくださいね。