公園

水辺の景色と緑を満喫 夫婦池公園

2023.02.28

夫婦池公園は、鎌倉市の西部に位置する、鎌倉山の山あいの広々した風致公園です。公園内には豊かな自然環境が保全され、貴重な動植物が自生しており、園内の散策路から野鳥や動植物を観察しながら散策できます。
この記事では、鎌倉の隠れ家的な公園・夫婦池公園をご紹介します。

夫婦池のルーツは、江戸時代に灌漑用水

夫婦池公園は、鎌倉市の西部・鎌倉山に位置します。ローストビーフで有名な「鎌倉山」の本店も、公園のすぐそば。
観光地としての鎌倉とはまた一味違う雰囲気を味わえるエリアです。

「夫婦池」は、もともと灌漑用につくられたふたつの池。
約330年前の江戸時代、代官・成瀬五佐衛門重治が、笛田村の農地を潤すための灌漑用水として右手の「下池」を掘らせ、明治時代になり左手の「上池」ができました。
大小ふたつの池は、親しみを込めて「夫婦池」と呼ばれるようになりました。

公園として開園したのは2009年4月。散策路が整備され、散策しながら湿地や深々とした木々の景色を楽しむことができます。

静かでのどかな雰囲気の広がる公園周辺

公共交通機関を利用し夫婦池後編へ行く場合は、鎌倉駅または大船駅からバス、または湘南モノレール「湘南深沢駅」から徒歩20分程度です。
今回は鎌倉駅から向かってみることにしました。

東口のバスターミナル6番乗り場より、江ノ島行きのバスに乗車。バスは最初は賑やかな観光地を通り抜けていきますが、長谷の大仏を過ぎ、坂道をぐんぐんのぼり鎌倉山が近づくと、周囲は緑豊かで閑静な住宅街となります。

夫婦池公園に行くには、「若松」というバス停で下車。
バスを降りると、駅周辺の喧騒が遠い世界のように、静かでのどかな雰囲気が広がっています。なだらかな坂道を下り公園へ近づくにつれ、視界の半分以上が緑に包まれていきます。

バス停から徒歩5分程度で、公園の入口に到着。
入口にはログハウス風の「パークセンター」(公園管理事務所)があります。ここで園内のパンフレットを入手できるほか、自動販売機やお手洗いも利用できます。

公園内に残る、防空壕

パークセンターから坂道を降っていくと、目の前に池が見えてきます。
夫婦池公園の名前にもなっている、上下二つの「夫婦池」です。

池の前は「水辺のさんぽみち」と称された散策路で、上池・下池の両方を見渡しながら散策ができます。ゴールデンウィークの頃には、池の対岸で開花する見事な藤の花も楽しめるとのこと。

上池と下池の間に渡された小道を対岸へ進むと、周囲が一気に緑に覆われます。

散策路には木道が渡されており、そのまま進んでいくと左手には森が広がっています。

シダやドクダミがそこかしこに密生しており、ところどころ水もちょろちょろと流れ、じっとり湿気を含みひんやりした空気。足元の土は緑の絨毯のように苔むしています。
谷戸の地形を五感で感じられる空間です。

そのまま木道を進むと「夫婦池公園と防空壕あと」という看板が。
なんと夫婦池公園内には、太平洋戦争当時につくられたと推定される防空壕が存在しているそう。

現在整備され、金網越しに防空壕の入口が見られるようになっています。
森の中でひっそり開いた穴は、異界への秘密の入口のような雰囲気です。

ベンチのある草地で休憩

木道を少し戻ると、森と反対側は開けた草地が広がっています。

椅子やベンチもところどころに設けられており、池や森を眺めながら休憩を取ることができます。お弁当を食べる人たちの姿も。

草地ではさまざまな種類の野草が広がり、昆虫や野鳥も多く鑑賞することができます。

湿地の間を渡された木道を池に向かって進んでいくと、突き当りはテラスとなっています。
カワセミを観察できるほか、桜の開花シーズンには水面に映る桜の花を楽しめるとか。
テラスから池をぼーっと眺めるだけでも気持ちの良い場所です。

ハンゲショウが美しい、森の散策路

木道を戻り、再び池の間の道を通り、上池を右手にパークセンター方面にまっすぐ進むと、より緑深い「森のさんぽみち」に入っていきます。

池のすぐ近くは木道が渡されており、初夏には半夏生(ハンゲショウ)を楽しむことができます。

半夏生は、水辺や湿地に生える植物。半夏(7月初旬)の時期に開花し、白い葉が目立つので「半夏生」と呼ばれています。
葉の下半分が白くなるため「半化粧」という別名も。

木道の両脇に雲海のように広がる半夏生は、幻想的な美しさ。半夏生の向こうには、深い緑が奥の方まで広がっています。

湿地の間の木道を進んでいくと、今度は向こうの方までつづく階段が現れます。
足元はじっとり苔むしていて、シダが群生しています。湿気を帯びた谷戸地形なのでしょう。

しっとりした土や葉の匂いに、鳥がさえずる声や、風が通り抜けて葉が触れ合う音。

五感で気持ちの良い空気を浴びながら階段を登りきると、視界がひらけ、眼前には車道や鎌倉山の住宅街が広がっています。

街のすぐそばに残る森

水辺の景色や、谷戸独特のしっとりした空気を味わいながら、野鳥や貴重な植物も観察できる夫婦池公園。これからの季節は、ちょっとした避暑や、お子さまとのお出かけにおすすめです。

園内は散策路が整備されていますが、ところどころぬかるんだ場所も。歩きやすい靴でお出かけください。

観光地だけではない鎌倉の雰囲気を味わいたい方、お子さんと一緒に身近な場所で自然観察をしたい方、ぜひ少しだけ足を伸ばして、夫婦池公園を訪れてみてはいかがでしょうか。

スポット名夫婦池公園
住所〒248-0031
神奈川県鎌倉市鎌倉山2丁目2-2
電話番号0467-38-1183
休園日毎年12月29日〜翌年1月3日
開園時間8:30〜17:15
入場料無料
駐車場あり
URLhttp://kamakura-park.com/go/meotoike_park/index.html
記事を書いた人
逗子在住。外資系出版社勤務の傍ら、2016年よりライターとして活動開始。2020年2月よりフリーランス。街角の園芸活動や植物に魅了され「路上園芸学会」を名乗り魅力を発信。 ウェブメディアを中心に、街歩きや植物に関する取材記事、インタビュー記事などを執筆。2016年よりデザイナーの藤田泰実とともに路上観察ユニット「SABOTENS」としても活動。組み合わせると路上園芸の風景が作れる「家ンゲイはんこ」の制作や、国内外での作品展示・グッズ販売を行う。