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花の寺・文化財の宝庫として知られる極楽寺の魅力を紹介

2023.08.07

鎌倉唯一の真言律宗の寺として知られる極楽寺。鎌倉の中心部である鎌倉駅からは少し距離がありますが、江ノ電の極楽寺駅からはすぐ近くなので、比較的訪れやすいスポットです。
正式名称は「霊鷲山感應院極楽律寺」。今回は、極楽寺の歴史や見どころをご紹介します。

北条重時の発願で建てた念仏堂が起源のお寺

茅葺屋根の山門が趣のある極楽寺。街全体の雰囲気とも調和した、歴史ある寺院です。そんな極楽寺の歴史を見ていきます。

父子の二代がかりで造営

【極楽寺】風情を感じる山門

極楽寺は、北条義時の三男・重時が建立しました。北条重時の発願で正永和尚が深沢に建てた念仏堂を起源としています。執権を補佐する連署を務めた重時は、その後政治に執着することなく出家し、1259年に寺の造営を始めて再建。
しかしわずか2年後の1261年に重時は亡くなり、子である長時と業時が父の志を継いで極楽寺の伽藍を整備するなどして完成させました。

寺の起源には諸説あって必ずしも明らかではありませんが、史書・吾妻鏡には、1261年4月に北条重時が時の将軍・宗尊親王を「極楽寺新造山荘」に招き、笠懸を行ったとの記事があり、この時点での極楽寺の存在と重時との関係が確認できます。

慈善救済で生き仏として仰がれた忍性

開山には当時多宝寺にいた忍性を迎えています。
忍性は広大な境内に慈善救済の大事業を営み、施益院・施薬悲田院・療病院などの建物が並び、日夜多数の病者を収容しました。貧しい者には無料で加療・施薬をしたといわれています。精力的な活動をした忍性は、さらに土木事業も起こし、生き仏として仰がれるほどでした。最盛期の極楽寺には七堂伽藍に多くの子院が立ち並んでいたと言われています。

【極楽寺】薬草をすりつぶした石臼と石鉢

度重なる天災や戦災、そして1333年の新田義貞の鎌倉攻めの戦火によって、病舎や支院はことごとく消失してしまいました。以後再建を繰り返しましたが、そのたびに焼失し現在では鎌倉時代の御堂は何も残っていません。
また、本堂前にある薬草をすりつぶした石臼と石鉢が、今でも忍性の大事業を示しています。

自然の美しさが堪能できる春の極楽寺

極楽寺では、風情のある境内で花の季節を満喫することができます。あじさいシーズンには山門前のあじさいが美しいことで有名ですが、その他の季節も様々な花が境内を彩ります。
極楽寺の花の季節の魅力をご紹介。

小さいながらも美しい桜のアーチ

【極楽寺】桜のアーチ

極楽寺の山門をくぐったところから本堂の手前までの間にはソメイヨシノが植えられており、小さいながらも綺麗な桜並木でつくられる桜のアーチが楽しめます。

【極楽寺】大師堂の前には八重桜

また、大師堂の前には八重桜が姿を現します。ふわふわとした濃いピンクのかわいらしい花が特徴です。
桜のシーズンには秘仏本尊の清凉寺式釈迦如来が開扉されるほか、花まつり(お釈迦様の誕生日を祝う行事)や開山忍性の五輪塔の特別公開が行われることでも有名です。

新緑に包まれる参道で出会う白藤

【極楽寺】境内を華やかにする白藤

紫の色が一般的な藤ですが、極楽寺では純白で神秘的な白藤を見ることができます。
つつじやチューリップ、八重桜などの花のほか、青々とした新緑が輝く中で、甘い香りを漂わせる白藤は、格別な美しさと存在感。青空とのコントラストも鮮やかです。

二種類の花が咲く八重一重咲分桜

【極楽寺】八重一重咲分桜

本堂前には北条時宗のお手植えとされる八重一重咲分桜があります。この桜は鎌倉原産で桐ケ谷、御車返し、鎌倉桜などと呼ばれており、八重と一重の花が混生する珍しい桜です。
濃淡の違った二種類の桜の花が一房に混同している様子はとても可愛らしく、特別感があります。

江ノ電とのコラボレーションを楽しめるあじさい

【極楽寺】江ノ電とあじさいのコラボレーション

江ノ電からも見ることのできる極楽寺山門前のあじさいは、6月の中旬頃から例年見頃を迎えます。
江ノ電とあじさいという鎌倉らしい写真を撮ることのできるフォトスポットとしても有名です。

【極楽寺】趣のある山門とあじさい

あじさいの種類も豊富で、爽やかな青色や紫色のあじさいらしい形をしたものや、純白のアナベル、ガクアジサイの仲間である甘茶という種類など、彩り豊かに咲き誇っている姿が見られます。
甘茶はお釈迦様の誕生日に誕生仏に灌ぐお茶の花です。

文化財の宝庫として知られる極楽寺

鎌倉でも有数の文化財の宝庫として知られている極楽寺。
本堂に向かって右手にある宝物館(転法輪殿)では、期間限定で国重要文化財の木造釈迦如来立像、木造釈迦如来坐像、木造十大弟子立像、木造不動明王坐像などを公開しています。

木造釈迦如来立像(国重要文化財)

極楽寺のご本尊。衣紋や頭髪に特徴のある、清凉寺式釈迦如来と呼ばれる様式でつくられています。
国の重要文化財として登録され、転法輪殿に安置されて秘仏とされており、4月7,8日に御開帳します。

木造釈迦如来坐像(国重要文化財)

転法輪の印を結んでいる釈迦如来像。転法輪とは、仏が説法をする時に結ぶ印相のことで、説法印とも言います。説法印を結んだ釈迦如来像は珍しく、全国でも数が少なく貴重とのこと。
転法輪殿に安置されています。

木造十大弟子立像(国重要文化財)

十大弟子立像も国の重要文化財として登録されています。
十大弟子とは、釈迦の弟子の中で特に優れた10人のことで、群像として表現されています。それぞれの個性が丁寧に表現されていながらも、群像として調和が整えられています。

木造不動明王坐像(国重要文化財)

不動明王坐像は、転法輪殿に安置されている国の重要文化財です。
元は島根県の勝達寺にあった像とのこと。大正5年に極楽寺に移されました。

その他の文化財

鎌倉市文化財に指定された木造文殊菩薩坐像や金銅密教法具、銅骨蔵器などがあります。

季節の花と文化を楽しめるのが魅力

【極楽寺】花の魅力たっぷり・本堂とつつじ

極楽寺では春の花のほか、四季を通してさまざまな草木や花を楽しむことができます。
夏のフヨウ、秋のヒガンバナ、サザンカ、冬のウメ、ジンチョウゲなど、季節によって様々な表情を見せてくれるので、何度訪ねても飽きずに景色を堪能できるのも極楽寺の魅力。
また、極楽寺の仏像が並ぶ姿は壮観です。あまり仏像には興味がないと思っている方も、一度見に訪れて魅力を知ってみるのはいかがでしょうか?

スポット名極楽寺
住所神奈川県鎌倉市極楽寺3-6-7
電話番号0467-22-3402
参拝時間9:00~16:30
(宝物館は4/25~5/25および10/25~11/25の火・木・土・日曜日のみ開館。
10:00~16:00 雨天休館)
拝観料志納(宝物館は300円)
URLhttps://www.trip-kamakura.com/place/135.html
(鎌倉観光公式ガイド)
記事を書いた人
関東在住のフリーライター。街歩き・読書・映画など、ひとりで楽しめるものが好きです。