鎌倉の「もうひとつの顔」に出会う場所――小町通りとはひと味違う、御成通り商店街の歩き方
鎌倉駅を降り立つと、多くの人が東口の「小町通り」へと向かいます。食べ歩きや買い物客でにぎわうその華やかな光景は、鎌倉観光の定番かもしれません。 けれど、駅の反対側、西口にも魅力的な通りがあるのをご存知でしょうか。
「御成(おなり)通り商店街」。地元の人も日常的に使うこの場所には、観光地の喧騒から少し離れた、静かで豊かな時間が流れています。今回は、小町通りとはひと味違う、御成通りの歴史や魅力について紹介します。
100年の歴史が育む「のんびり」とした空気感

鎌倉駅西口を出て、左手に目を向けると目に入るのが御成通り商店街です。もともとは、明治時代に鎌倉御用邸へと続く「御成道」。その名残をそのまま引き継ぎ、大正時代の地図にもすでに通りとして記されていたという、歴史ある商店街です。
全長は約300メートル。散策するのにちょうどいい距離感で、無理なく歩けるのも魅力のひとつです。
歩き出してまず感じるのは、「のんびりとした空気感」。大規模なチェーン店の姿はほとんどなく、個人商店が営むのにちょうどいい規模の店が、無理のない距離感で並んでいます。
御成通り商店街の協同組合で理事長を務める小嶋淳志さんは、その魅力についてこう話します。
「このエリアならではの落ち着いた雰囲気が心地よく、多くの店主がその空気感を大切にしていると感じます」
観光客と地元の人たちが、およそ半々で行き交うこの通り。にぎわいすぎず、静かすぎない。そのあいだに、地に足のついた暮らしの風景が、自然なかたちで広がっています。
新旧が交差する、小さな挑戦を応援する街

御成通りの面白さは、昔ながらの老舗と新しいお店が、違和感なく混ざり合っているところにあります。昭和の面影を残す酒屋や薬局の並びに、スタイリッシュなハンバーガーショップやカプセルトイの店など、若い世代に向けた新しい店舗も自然と溶け込んでいます。
新しく加わる店に共通しているのは、この通りへのリスペクトです。たとえば2018年にオープンした「CHOCOLATE BANK(チョコレートバンク)」は、旧東日本銀行鎌倉支店をリノベーションしたもの。かつての外観を残しながら、新しい役割を持った場所へと生まれ変わりました。
2026年3月には、築70年の一軒家を改装した小規模複合スペース「とすいハウス」も誕生。かつての暮らしの間取りを活かした空間に、花屋やカフェ、雑貨店など個性豊かな小さなお店が集まっています。誰かの家に遊びに来たような感覚で、新しい出会いを楽しめる場所です。
こうして新たに加わる事業者が通りの歴史を尊重する一方で、鎌倉御成商店街協同組合もまた、これからの担い手に向けて門戸を開いています。

その取り組みのひとつが、「御成レンタルスペース TANAKO」。商店街組合が空き店舗を借り受け、1週間単位で出店できる仕組みです。ハンドメイド作家やアパレルなど、「いつか鎌倉で店を持ちたい」と考える人たちのチャレンジの場となっており、数ヶ月先まで予約が埋まるほどの人気を集めています。この取り組みは、第14回かながわ商店街大賞で優秀賞も受賞しました。
小さなスペースでも、通るたびに違う店に出会える。そのちょっとした変化が、この通りを歩く楽しさをつくっています。
小嶋理事長が教える、お気に入りのお店

そんな御成通りを歩くなら、ぜひ立ち寄っておきたいのが、地元の人が実際に通う一軒です。ガイドブックには載りきらないけれど、確かな満足感がある。そんな“間違いない店”を知っているかどうかで、散策の楽しさはぐっと深まります。
そこで、小嶋理事長に「ご自身がよく行くお気に入りのお店」を教えてもらいました。
まず名前が挙がったのが、中華料理の「chinese cuisine 滬菜 nakahara」です。
2025年にオープンした比較的新しい店で、御成通りから少し脇道に入った場所にあります。由比ガ浜大通りの1本裏手、有名なドイツパンの店「ベルグフェルド」の手前あたり。紫がかったシックな店構えが目印です。
「お店もきれいで、女性同士のランチにもすごく向いていると思いますよ」と小嶋理事長。
お気に入りの理由は、その確かな「満足感」だと言います。「普通の日替わりランチセットを頼んでも、なんだかちょっとしたコース料理を食べたような気分になるんです。上品で、すごく美味しいですよ」と絶賛します。
夜の鎌倉を楽しむなら、いい音楽が流れるバー「ユニバイブ」へ

さらに「飲むところだったら」と、夜のおすすめとして挙げてくれたのが、「univibe(ユニバイブ)」です。
「いい音楽が流れている飲み屋」だというこちらのお店。地元のお客さんも多いそうですが、観光で訪れる一見さんにもおすすめの理由があるのだとか。
小嶋理事長は、「地元の人が溜まりすぎていると、少し入りづらいじゃないですか。でもここは店内が意外と広いので、向こうで常連さんが集まっていても、こっちは全然違うスペースとして自分の時間を過ごせるんです。だから初めてでも行きやすいと思いますよ」とその魅力を語ってくれました。
御成通り周辺には、美味しい中華ランチから、一日の余韻に浸れる夜のバーまで、地元の人に愛される知られざる名店が揃っています。

ちなみに、小嶋理事長が営むのは、この2店のすぐ近くにある園芸店「鎌倉ロコマート&ガーデン」。もともとご実家が牛乳屋や喫茶店を営んでいた場所を建て直し、オープンして今年で31年目を迎えます。「地元に愛される店でありたい」という思いから、「ローカル(地元)」にちなんで名付けられました。
店内には70年代の陽気なアメリカンソングが流れ、世界各国から取り寄せたガーデンツールや、かわいらしい種のパッケージが所狭しと並びます。園芸の用事がある人はもちろん、そうでない人でもふらりと立ち寄りたくなる、間口の広さが魅力です。
朝はこだわりのベーカリーでパンを買い、午後は路地裏のカフェでひと休み。夕方には地元で愛される惣菜店に立ち寄り、夜は静かなバーでグラスを傾ける。そんな「暮らすような旅」が、ここには似合います。
「とにかく『御成(おなり)通り』という名前を覚えていただきたいです。小学生の遠足などで『ごせい通り』と間違えられてしまうこともあるので(笑)」と小嶋理事長。
次に鎌倉を訪れる際は、ぜひ新しい出会いと懐かしさが交差する「御成通り」を歩いてみませんか。
\御成通りのお店紹介はこちら/
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