神社

歴史ある鎌倉の季節の通り道【段葛】の魅力

2023.09.08

鎌倉の町中に人々の憩いの場として佇む、鶴岡八幡宮。その参道の一段高い部分を、「段葛(だんかずら)」といいます。鎌倉の観光スポットや駅からの通り道として、人々で賑わう鎌倉の有名スポットです。
鎌倉駅と鶴岡八幡宮を結ぶ歩行者のメイン通りとしては、商店が多く並んでいて有名な小町通りとあわせて人気です。また、美しい桜のアーチがあるため、お花見も楽しみに訪れる参拝者も多い場所です。
今回はそんな段葛の現在に至るまでの歴史や、季節によって変化する楽しみ方をご紹介します。

鎌倉時代から現在に至る「段葛」の姿

【段葛】新緑の季節

段葛とは、鶴岡八幡宮の参道・若宮大路のなかでも二ノ鳥居から鶴岡八幡宮までの車道より一段高い参道のことを指します。
神奈川県の史跡にも指定されており、その歴史は鎌倉時代からと長く親しまれてきました。

源頼朝が妻の安産への願いを込めた段葛

【段葛】源頼朝ゆかりの場所

平安時代、相模守であった源頼義(みなもとのよりよし)が戦で勝利した際、源氏の氏神である京都「石清水八幡宮」のご祭神である八幡神の御分霊を由比ヶ浜辺に祀りました。
そして鎌倉時代の始まりとなる1180年、鎌倉入りした源頼朝が武家の都のシンボルとして、鶴岡八幡宮を現在の位置に遷したのです。

その後1182年、鶴岡八幡宮の社殿から海まで続く参道「若宮大路」が造られました。
なかでも通常の道よりも一段高い段葛は、頼朝が妻である北条政子の安産を祈って造られたと言われています。

平成の大改修を経た現在

【段葛】改修後の美しい段葛

2014年10月より、再び改修工事が行われ、2016年3月に完成。これにより、石積みがさらに高くなっているほか、路面も舗装され、土が剥き出しだった部分がなくなり、現在の美しい段葛の姿へとなったのです。

花で感じる季節の通り道

段葛には明治時代の中期から植樹されています。定期的に手入れがされ、人の手によって美しく管理されているため、春の桜、初夏のつつじなど、四季を通して美しい姿を見ることができるのです。
では、実際のその美しい四季折々の様子をお伝えしましょう。

桜のアーチ

【段葛】桜のアーチ(画像提供:鶴岡八幡宮)

約200本もの桜の木が連なる段葛は、春(3月下旬~4月上旬)には桜のアーチとして人気スポットとなります。

初夏を彩るつつじ

【段葛】つつじ①(画像提供:鶴岡八幡宮)

4月下旬から5月上旬の新緑が輝く段葛の桜の根元には、つつじが美しく並びます。
陽気な気温とさわやかな風を受けて、白、薄ピンク、濃いピンクなど、さまざまな色を付けた花々が咲き誇るのです。

【段葛】つつじ②(画像提供:鶴岡八幡宮)

現在のつつじは2015年に植え替えがされたもので、それまで植えられていたつつじは、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島の3県に寄贈されました。

年間を通じて行われる祭事

段葛から続く鶴岡八幡宮では、年間を通してさまざまな祭事が行われています。鶴岡八幡宮で祭事が執り行われる際には、段葛に日の丸の旗が掲げられていることも。
また、段葛を舞台に行われる行事もありますので、ぜひ注目してみてください。

木遣り唄にのせて段葛をすすむ手斧始式(毎年1月4日)

手斧始式は、1181年に頼朝公が行った八幡宮造営時に「若宮営作始」が行われた際、海上輸送されてきた用材を由比ガ浜に引き上げた後、木遣唄にのせて境内まで運び製材・加工した一連の工程を神事として再興されたもの。
鎌倉の建築業界全体の仕事始めという意味を込めて毎年1月4日に奉納されます。

鎌倉時代に使われていた大工道具(手斧・尺杖・指矩・墨壺・鋸・槍鉋)を使用した用材加工の所作が奉納され、一連の神事を終えた後は、鎌倉鳶衆による「梯子(はしご)乗り」が披露されます。
木遣り唄にのせて、御神木が段葛を進み、境内へと入っていく様子がみられます。

知れば通りたくなる段葛の見どころ

自然や歴史など、さまざまな魅力がある段葛。見て回るだけでも楽しめる魅力がいくつもあります。

歴史を感じる二ノ鳥居・三ノ鳥居

【段葛】二ノ鳥居

段葛の鎌倉駅付近側にある二ノ鳥居。付近には石灯篭や大きな狛犬があり、春には桜景色とともに写真に収めることもできます。

【段葛】三ノ鳥居

駅方面から段葛を抜けると、鶴岡八幡宮の入口である三ノ鳥居が現れます。こちらもとても大きく迫力満点で、歴史を感じられる建造物です。

ちなみに、一ノ鳥居は鎌倉駅から鶴岡八幡宮とは反対方向にあるため、鎌倉駅から訪れた参拝者の目に触れることが少ない鳥居です。
せっかく鎌倉の歴史に触れるのであれば、一ノ鳥居まで足を伸ばして、順に巡ってみてはいかがでしょうか。

段葛碑

段葛碑は、大正時代に鎌倉町青年会によって建てられた史跡碑・旧跡碑です。現在の段葛の中ではかなり歴史があり古いもののひとつ。こちらは二ノ鳥居のすぐ後ろにあるため、気付かずに通り過ぎてしまう人も多いスポットです。
石碑には段葛の歴史について記載されています。

遠近法を取り入れた道幅

【段葛】遠近法を使った造り

段葛は鶴岡八幡宮に近づけば近づくほど、道幅が狭くなっています。
これは、鎌倉幕府が攻め込まれるのを防ぐためのものといわれており、遠近法によって実際の距離より長く見えるように工夫がされているそう。
何度か行われた改修工事でも、ずっとその姿を踏襲しています。

段葛で歴史と季節の空気を感じる

鎌倉駅から鶴岡八幡宮へ向かう際、その活気やお店の多さからなんとなく小町通りを使うという人は多いのではないでしょうか。
もちろん、お土産の購入や食べ歩きをしたいという時には小町通りがぴったりですが、もう少しゆったりと鶴岡八幡宮へ向かいたいという時は段葛のある若宮大路を使うのもおすすめです。

昔から何度も改修を重ねた歴史や、季節の香りを感じられる草花など、ほかにはない魅力のある段葛に、是非一度訪れてみてはいかがでしょうか。

スポット名段葛
住所神奈川県鎌倉市雪ノ下2丁目1−31
電話番号0467-22-0315(鶴岡八幡宮)
URLhttps://www.hachimangu.or.jp/
記事を書いた人
関東在住のフリーライター。街歩き・読書・映画など、ひとりで楽しめるものが好きです。